2010-01-01から1年間の記事一覧

日本的雇用システムの特徴

HRM

本田(2009)は、日本的雇用の特徴として、浜口(2009)の次の指摘を挙げている。まず、日本の労働市場では、正社員と非正社員の世界が、相対立する原理によって成り立っているという。正社員は、担当する職務=ジョブの範囲が明確でなく、企業という組織に所属…

日本的賃金・労使関係の本質

HRM

濱口(2009)によれば、職務と結びついた雇用ではなく、組織へのメンバーシップ雇用を中心とする日本企業においては、職務と賃金をリンクすることは困難である。よって、賃金は担当職務とは基本的に切り離されている。その代わりに用いられる指標としては、勤…

日本的人事制度の再評価

HRM

1980年代、不況にあえぐ米国企業にとって、競争力を取り戻すためのお手本となったのが、日本の雇用慣行であった。いわゆる、終身雇用、年功序列、企業内労働組合の三種の神器に代表される日本的雇用慣行は、その企業の競争力にもたらす長所が分析され、アメ…

組織志向型の雇用慣行と市場志向型の雇用慣行

HRM

戦略的人的資源管理論(SHRM)では、アメリカをはじめとする世界各地の雇用慣行が、株主志向、人材の流動化、雇用の外部化などを特徴とするマーケット志向型に傾きつつあるのに対し、安定雇用や教育投資などを重視する組織志向型の雇用慣行(HPWS)の優位性が説…

モティベーション・プロセスにおける感情経験の直接・間接効果

ob

人間のモティベーションを要素に分解するとするならば、(1)方向性(何を選択するのか、何を行うのか)、(2)強度(どれほどの努力を注ぎ込むのか)、(3)持続性(どれだけ維持するか)に分けることができるでしょう。 このようなモティベーションの特…

organization oriented vs. market oriented

HRM

Jacoby (2004) concludes that much more diversity in the approach to human resources management is found in American firms than in Japanese firms. Human resources management systems of Japanese firms are partially moving from organization-o…

統合理論の作り方

学問上、それぞれ独立して発展してきたが、お互いに似たようなテーマを扱っており、関連性がありそうな複数の理論があったりする。これは、それらの理論を作ってきた人々が、異なる学問的修行を積んできたり、異なる学問の集団に属してきたりしてきたために…

本能・理性・能力感が絡む新しいモティベーション論

ob

Kehrは、モティベーションを、(1)潜在的動機(implicit motives)、(2)顕在的動機(implicit motives)、(3)能力感(perceived abilities)の3つの要素によって構成されるものとして考えるモデル「補償モデル(compensatory model)」を提唱しています。 潜在的動機…

テンポラル・モティベーション理論

ob

モティベーション研究で有名な古典的な理論として、期待理論があります。期待理論は端的に言えば、努力した結果、望ましいものが手に入る主観的な確率が、その人のモティベーションの強度を決定するというものです。最近、この期待理論をサブコンポーネント…

研究結果に関する直感が優れた論文につながる可能性

調査結果を得たときに、「これはモノになるのではないか」と直感的に感じることがある。その理由の1つは、調査および結果、そしてそれにつながるストーリーのオリジナリティが高そうだということと、結果が知的に面白く、かつ実践に与える示唆に富んでいそ…

投稿論文の長い旅4

査読結果を読み、困難に思える問題点を克服しながらも、なんとか再投稿用の原稿を仕上げるまでにはものすごく時間がかかるものだが、査読者に対して修正を説明する手紙を書くのにも、これと同じくらいの時間と労力が必要なのである。通常、査読者は3名ほど…

未来を見通し危機に備える

北尾(2009)の著書の随所において、古典に基づく先哲の知恵が紹介されている。例えば『易経』は、物事が変化する前に、その変化すなわち「幾」を察する能力を養うための書物だという。物事が動き、変化する前には必ず「機微」が現れるが、この機微を察知する…

いのちの仕事で運命を健康にする

倉林(2004)は、運命には波があり、一時的に運命がよくなったとしても、いずれは下降していく。下降した運命は再び上昇していく。人はみな、この波に左右されていると言う。つまり、人生には良いときもあれば悪いときもあるということである。 大事なのは、運…

孫子の兵法と立体的・流動的アプローチ

菊澤(2009)は、物理的世界、心理的世界、知性的世界の3つの世界を考慮するキュービックグランドストラテジーの概念を提唱している。そしてこの3つの世界をとらえ、かつ流動的なアプローチをとっている代表例として孫子の兵法を挙げている。 例えば孫子は「計…

「鳥の目」と「虫の目」

篠上は、ビジネスパーソンは「鳥の目」を持って世の中の大きな流れを俯瞰し、「虫の目」を持って現場を見るクセをつけるべきだと言う。時代の流れを大きく、しかも細部にわたってみる力である。鳥の目と虫の目の両方を持っていると、「今何を優先すべきか」…

水の力強さに学ぶ

守屋(2008)は、中国の兵法書をひき「水はきわめて柔弱であるが、行く手をさえぎるものは、たとえ丘陵でもうちくずしてしまうので、変幻自在な戦略に基づいて水のように行動するならば天下に敵するものはないという言葉を紹介している。 守屋によれば、水は力…

麻雀卓は小宇宙

桜井(2008)は、麻雀は流れを読むことが勝負を左右すると言う。流れの性質、その強弱や大小を見取って勝負していくのである。たとえば大きな波と小さな波、強い風と弱い風があるように、麻雀も満貫、ハネ満というような大きな点数がどんどん出る「荒れ場」と…

ノート術で思考を整理し、上手に書く

倉下忠憲氏は、ブログにおいて、思考を整理するためのノート術や、文章の効果的な書き方を紹介している。例えば、メタ・ノートを使ってアイデアを熟成していくプロセスを紹介している。そこで、twitterをメモとして、ノートアプリをノートとして、そしてブロ…

流れを読んで「運」に運ばれる

桜井(2008)は、変化を感じ取り、流れをつかめばおのずと運命は変わっていくと言う。変化をつかみ、その上でさらに自分が望む流れをつくっていこうとするわけである。桜井によると、運には「天運」「人運」「地運」「時運」があり、自然の動き、時と場所の良…

論文執筆で必要なWhyとSo What

論文執筆でとりわけ大切なのが、「Why?」を繰り返すこと。もう1つは「So What?」を繰り返すことである。 論文は論理がつながったものであり、論理に穴があってはいけない。例えば、あることを言おうとした場合に、Why?「なぜそれが言えるのか」「どうしてそ…

流れを心得れば負けなくなる

桜井(2009)は、流れを感じ取る力が勝負で負けない技術につながると示唆する。桜井によれば、勝負も我々が生きる社会も、自然界における川の流れも雲の流れも、絶えず変化している。物事は変化して当然なのだ。いいときもあれば悪いときもある。寄せる波はや…

水のような組織

守屋(2004)は、逃げることや退却を支柱とした戦略や組織を「孫子」と絡めて解説している。例えば、一見するとネガティブな「逃げ」や「退却」をうまく活用し、自己の勢力を維持・拡大しながら、やがて強大な敵を倒してしまう。その核心を一言でまとめると「…

「勢い」の重要性

守屋(2004)は、孫子の「善く戦う者は、その勢は険にして、その節は短なり・・・(激しい勢いに乗じ、一瞬の瞬発力を発揮するのが戦上手の戦い方だ。弓にたとえれば、引きしぼった弓の弾力が「勢い」であり、放たれた瞬間の矢の速力が「瞬発力」である)」を…

数学と音楽と美的感覚と「流れ」

加藤(2008)は、数学が持つ美しさには、対象性やシンプルさといった「空間的」なもの(視覚的なもの)の他に、「時間的」なものがあると思うという。それは特に、証明などの「論理」の構造に感じられ「流れ」として認識される。例えばユークリッド幾何学の芸…

モデルの妥当性を判断する

数学の歴史的展開を分かりやすく解説する加藤(2007)によると、数学の場合、例えば無限概念が用いられるもののように、モデルが正しいか正しくないのかは、観察することによっては判定できない。 物理学や化学などの自然科学なら、自然現象を説明するために、…

人生は相場だ

中島(2002)は、中国古典の名作「菜根譚」の次の一節を紹介している。 地位はあまり上がらないほうがよい。昇りつめると陥穽が待ちうけている。 才能はほどほどに発揮したほうがよい。出し尽くすと、あとが続かなくなる。 立派な行いも、ほどほどにしたほうが…

変化を見抜く能力

中島(2002)は、直観を鋭くするためには5つのカンを磨けとして、変化の前に必ずある予兆を見抜く能力を構成する要素として「観・看・鑑・関・感」の5カンを挙げている。 1つ目は、広い視野で現象を確かめる「観」。2つ目は変化をとらえ、その先を追い求める…

ゲーム理論と「時間の流れ」

川西(2009)は、ゲーム理論の解説書の中で、ダイナミック・ゲームすなわち「動きがある」「時間の流れがある」ゲームについて説明している。 ダイナミックゲームとは「時間が経過するとともに、展開が変わっていくゲーム」をさす。たとえば、意思決定のタイミ…

巡環の思想

中野(2009)は「循環」とは異なる「巡環」という言葉を用いて、巡環力を説いている。 中野によれば、人は目に見えない何かを、いつも他人や自分と巡らせている。この巡らせているものの質によって、目に見えるものが作られていると考える。この巡りを「巡環」…