2018-01-01から1年間の記事一覧

グラウンデッド・セオリー・アプローチを支える3つのパースペクティブ

グラウンデッド・セオリー・アプローチとは、質的研究の1つで、リアルな世界に立脚した形で理論を構築したり理論を精緻化するための方法論である。リアルな世界の現象をとらえた具体的な質的・量的データから出発し、データを分析することで、新たなアイデ…

優れた理論とは何か

経営学に限らず、学問の世界では、優れた理論の構築が目的とされる。優れた理論は、人々の世界観や思考・実践のあり方を変え、世界を変える力を持っている。では、優れた理論の条件とは何だろうか。Gligor, Esmark, & Gölgeci (2016)は、先行文献をまとめつ…

数量的研究の論文を査読する際のチェックリスト

研究者であれば、同分野の雑誌に投稿された論文を査読する機会が増えてくる。投稿論文の査読は、投稿された論文の内容を、科学的厳密性、妥当性の観点から批判的に評価することである。批判的評価といっても、当然分野によってその判断基準が異なってくるこ…

京都大学国際高等教育院 外国文献研究 推薦図書リストの紹介

京都大学国際高等教育院 外国文献研究 推薦図書リストの紹介 この授業は、主に大学2年生向けに、英語で書かれたビジネス分野の入門テキストを用いて英語文献を読みこなす能力とビジネスに関する知識の両方を獲得することを目的とした授業です。毎回の授業で…

なぜ分散分析で平方和や平均平方という用語が使われるのか

分散分析について初めて勉強するとおそらく混乱すると思われる言葉が、平方和や平均平方である。分散分析なのだから分散という言葉を用いて説明してほしいのに、平方和とか平均平方がでてきて混乱するのである。平方和については、偏差平方和とか、残差平方…

「人間万事塞翁が馬」に学ぶ中国思想

中国のことわざに「人間(じんかん)万事塞翁が馬」というものがある。金谷(1993)によれば、これは『淮南子』に出てくる「塞翁が馬」から来ている。国境の砦のほとりにひとりの老人がおり、ある時飼っていた馬が逃げてしまった。人々がおくやみをいうと、「…

正規分布の解剖学

統計学の中でももっとも重要な概念といってもよいのが、正規分布である。正規分布は、世の中の本質を表しているといってもよい概念でありながら、式を見ると複雑でかつミステリアスである。実際に、正規分布の式は、分布の平均をμ、分散をσ^2とすると以下の…

モンティ・ホール問題の直感解(2分の1)は本当に間違っているのか

モンティ・ホール問題とは、条件付き確率を論じる際に頻出の問題で、確率論的に正しいことと人間の直感とが一致しないことの例としてよく話題になる。問題の内容は以下のとおりである。 「プレーヤーの前に閉まった3つのドアがあって、1つのドアの後ろには景…

信頼区間と確信区間はどう違うのか

統計学では、母集団からサンプルを採取し、そのサンプルの情報から、ある値を推定する。その際、推定した値の信頼区間(confidence interval)や確信区間(credibility interval)を構築する。信頼区間と確信区間は、紛らわしいが似て非なるものである。豊田(201…

ベクトルと三角関数を用いた相関係数の理解

相関係数は、2つの変数の関係を表す統計指標である。XとYの2つの変数があるとすると、Xが上がった場合にYも上がる度合が強ければ、XとYの相関は正であり強く、Xが上がったときにYが下がる度合いが強ければ、XとYの相関は負で弱い。Xが動く方向性とYが動く…

なぜ分析結果を見てから仮説を作った論文はリジェクトされるのか

HARKingとは、Hypothesizing After the Results are Knownの略語で、データを分析してみて結果を見てから、それにフィットするように仮説を作り、あたかもその仮説がデータ収集よりも先に存在していたかのように論文化していく行為である。このような行為は…

「論理とは流れ」であり「流れとは論理」である

加藤(2013)は、数学と音楽は似ているという話から入り、その理由として、数学では「論理」が決まって「流れ」を構成し、それは音楽的な「流れ」とよく似たものであるといい、その後、「論理とは流れ」であり「流れとは論理」であるという説を展開している。…