2021-01-01から1年間の記事一覧

経営学における「必要条件分析(necessary condition analysis)」の重要性

経営学においては、あるいは経営学のみならずさまざまな学問分野において、因果関係を論じることは理論構築の本質的作業である。しかし、気を付けなければならないのは、因果関係を論じる際に、「必要条件」と「十分条件」そして「必要十分条件」の違いを明…

「対話」としての学術論文

個別の研究課題は、学術論文として学術雑誌に掲載された時点でいったん終了する。とはいっても、学術雑誌に掲載させるまでの道のりは平たんではなく、投稿先雑誌の選定から投稿、改訂のうえ再査読などを経て掲載決定に至るが、とりわけ影響力が大きいトップ…

統計学の認識論:ベイズ主義と頻度主義

大塚(2020)は、統計的手法とは特定の科学的仮説をデータから正当化するための認識論的装置であるという視点に立ち、帰納推論によって真実に近づこうとする統計学が、いかなる形でそれによって得られる信念を知識として正当化できるのかを、ベイズ主義と頻度…

統計学はどのように世界を理解しようとするのか

大塚(2020)によれば、統計学、とりわけ推測統計は、「帰納論理」「帰納推論」を通して世界を理解しようとする学問であり、統計学自身が、一定の存在論的前提に立つ科学認識論でもある。 一般的に、与えられた経験、観測、データをもとにして、まだ観測されて…

ベイズ主義、尤度主義、頻度主義の関係性

科学は、数学のように論理のみで閉じた世界ではなく、理論や仮説を常に経験(証拠)と照らし合わせることで発展する。観測から得られる経験や証拠には確率的要素を排除できないため、科学的方法の根幹を支えるのが、統計的推論であるといえる。研究の過程で…

経営学における「探求する精神」:基礎科学から何を学べるか

経営学は応用的な学問分野であるため、「経営学は実務の役に立つのか」というのは常につきまとう問いである。実務の役に立つ経営学研究はどのようにすれば可能なのかという問いに置き換えてもよいだろう。今回は、この問いに答えるために、大栗(2021)が基礎…

京都大学国際高等教育院 外国文献研究 推薦図書リストの紹介

この授業は、主に大学2年生向けに、英語で書かれたビジネス分野の入門テキストを用いて英語文献を読みこなす能力とビジネスに関する知識の両方を獲得することを目的とした授業です。毎回の授業で、該当するチャプターに関連するビジネス分野の名著を紹介し…

哲学・倫理の書として読む「易経」

松枝・竹内(1996)によれば、易経(周易)は、最初は運勢を判断する言葉を集めただけのものであったが、後になって言葉の注釈や周易全体を統一的に解釈するための理論が展開され、次第に哲学書としての体裁を整えるようになった。これらの注釈や易理論を編纂…