2019-01-01から1年間の記事一覧

対数正規分布が世の中の主要な統計分布である理由

松下(2019)によると、世界の物事のほとんどは、統計的に分布をとると、正規分布、べき乗分布、対数正規分布の3種類のどれかに近い形になる。正規分布は左右対称の釣り鐘型の頻度分布であり、べき乗分布は右肩下がりで頻度が同じ割合で減少し続ける代表的な…

単純傾斜分析(simple slope analysis)の直感的理解

独立変数間の交互作用を含む重回帰分析において、交互作用が有意になった場合に、その交互作用の特徴を理解するために行われる分析の一つが、単純傾斜分析(simple slope analysis)である。この手法は、経営学や組織行動論などにおいては頻出の分析であるとい…

どうすれば実践に役立つ論文を書くことができるか

経営学は学問である。よって、経営学の研究および論文には、理論的貢献や厳密な方法論が求められることは言うまでもない。同時に、経営学は応用学問であるから、経営の実践に対して役立てることも念頭に置かなければならない。経営学の学術論文は、同業者に…

媒介分析(mediation analysis)の間違った理解

経営学や組織行動研究で、媒介関係(mediation)を伴うモデルや仮説は頻出である。媒介仮説とは、独立変数 X が、従属変数 Y に与える影響を、M が媒介するというもので、X → M → Y という因果関係を想定するものである。調整関係(moderation)と組み合わせた調…

重回帰分析における相対的重みづけ分析(relative weight analysis)の直感的理解

経営学や組織行動などの研究で最も頻繁に使われる統計分析の1つが、重回帰分析である。重回帰分析では1つの目的変数を複数の説明変数で予測しようとする。この重回帰分析の際にしばしば生じる研究上の関心は、複数の予測変数の相対的な重要度(relative impo…

マネジメントジャーナルが掲載する論文にはどのような貢献が求められるのか

経営学(マネジメント分野)は、心理学や経済学などと比べると、より学際的な要素の強くかつ実践的な貢献も求められる学問分野である。また、Academy of Management Journal (AMJ) のような総合的なマネジメントジャーナルは、Strategic Management, Organiz…

経営学研究でどのように実践へのインパクトを生み出せばよいのか

経営学は応用的学問でもあるため、研究するにあたっては当然のことながら、この研究がどのようにして経営の実践に影響を与えることができるのかを考えざるを得ない。そして、実践へのインパクトに関する、実務家からの批判も、経営学内部からの自己批判もあ…

マルチレベル分析で説明変数を中心化する際のポイント

マルチレベル分析を実際に行うときによく出てくる疑問として、説明変数を中心化(センタリング)すべきかどうかというのがある。とりわけ、マルチレベル分析では、説明変数を集団内での平均値を用いて中心化する方法(集団平均中心化:group-mean centering)…

学際的理論構築の作法

経営学は基本的に学際的な学問である。経営学という独自の方法論が存在するわけではなく、経済学、心理学、社会学、人類学、政治学などから関連する概念や理論、方法論を借用することで、経営にまつわる現象の理解を志向してきたのである。よって、理論構築…

構造方程式モデリング(SEM)においてアイテムの小包化(parceling)をするべきか

構造方程式モデリングあるいは共分散構造分析は、経営学をはじめとする社会科学で頻繁に用いられる統計分析手法である。構造方程式モデリングを用いる利点の1つは、研究の対象となっている構成概念(実際は測定できない抽象的な概念であるが、なんらかの測…

時間は未来から過去に流れる

多くの人は、時間は過去から現在へ、そして未来へと流れるというように考えるのではないだろうか。しかし、主に認知言語学的視点から時間を考察する瀬戸(2017)によると、このイメージは錯覚である可能性が高い。むしろ、様々な認知言語学的証拠によって、わ…

ブートストラップ法の直感的理解

経営学においても近年よく用いられる統計手法として、ブートストラップ法(bootstrap method)というのがある。これは、リサンプリング(再抽出)という統計手法の1つで、似たようなものに、ジャックナイフ法というのもある。ブートストラップ法とは、何をね…

内生性、内生変数とは何か

経営学のみならず、経済学その他の研究におけるデータ分析で起こりうる問題としてよく指摘されるのが「内生性(endogeneity)」とか「内生変数(endogeneous variable)」である。しかし、この概念は英単語としても難しいし、何を意味しているのか分かりにくい。…

『職業としての小説家』から考える職業としての研究者

村上(2015)は、自分自身が「あまりにも個人的な考え方をする人間」であり、「ある意味では身勝手で個人的な文章」と断りをいれつつも、誰のために、どのように、そしてなぜ小説を書くのかなどについての自伝的エッセイを披露している。村上の「職業としての…

赤池情報量基準(AIC)とは何か

経営学をはじめとする学術研究のうち数量的研究では、検証したい理論や仮説を数量的にモデル化し、収集したデータを用いた統計分析を実施することで妥当性を検証する。その際、個々の仮説、例えば個別の変数間の関係を検証するのみならず、構築したモデル全…

統計分析において誤差分布が極めて重要な理由

経営学をはじめとする学術研究のうち数量的研究では、検証したい理論や仮説を数量的にモデル化し、収集したデータを用いた統計分析を実施することで妥当性を検証する。統計分析について、一見するとあまり脚光を浴びていないように思えるが実は極めて重要な…