2023-01-01から1年間の記事一覧

経営戦略を考える際には、まず船を置く位置を見定める

土井(2023)は、経営者や事業リーダーが戦略を考える際に行うべきことは、外部環境という川の流れを読み、どこに自分たちの船を置けばスーッと前に進んでいくのか、その適切な場所を見定めることだという。川の流れが速すぎるところに船を置くと、船に負担が…

因果複雑性の経営学(5):方程式思考と集合論思考

因果複雑性を考慮した経営学の中間的なおさらいとして、従来の経営学の思考を支配してきた方程式思考と、複雑性の経済学の根幹をなす集合論思考を改めて比較してみよう。まず、方程式思考であるが、こちらは以下のような式で表される思考様式である。 Y = a …

因果複雑性の経営学(4):理論構築のプロセス

因果複雑性の経営学は、旧来の方程式的あるいは線形代数的な理論構築を主とする経営学と因果関係の考え方など根本的な思想が異なるので、因果複雑性の経営学を発展させるための理論構築の方法も、旧来の線形代数的な相関関係をベースとなる理論構築の方法と…

因果複雑性の経営学(3):理論を支える数学的思考法

経営学にとって、より現実にフィットした因果複雑性を考慮した経営理論が未発達であった大きな理由が、研究者の方程式的思考、線形代数に依拠する論理構造に支配されていたことを指摘してきた。数学は、人類が有する学問のなかでも究極的に厳密な論理演算を…

因果複雑性の経営学(2):構成論アプローチのエッセンス

今回は、因果複雑性の経営学の根幹をなす構成論アプローチのエッセンスを解説する。前回書いたように、還元主義、線形性、対称性、純効果主義といった方程式的というか線形代数的な発想に支配された形で構築された従来の経営理論ではなく、経営現象における…

因果複雑性の経営学(1):従来の経営理論が有する欠陥

経営学が対象とする経営現象は、複雑である。例えば、企業業績は、様々な要素の組み合わせによって生じるもので、業績に影響を与える1つの決定的な要素があるわけではない。しかし、従来の経営学は、このような複雑性を考慮した理論を構築することができな…

3Eフレームワークで理論の完成度を採点する

経営学では、次々と新しい理論が登場する。ただ、重要なのは、それらの新しい理論が本当に優れているかどうかを瞬時に判断するのは難しいということである。とりわけ、多くの理論が、Academy of Management Reviewなどのトップジャーナルから生まれているた…

人類社会に強いインパクトをもたらす経営学研究とは

経営学は応用学問であるため、経営学研究が社会に対して強いインパクトをもたらすことも期待されている。経営学だから企業経営の特定の分野・機能や企業業績の向上に役立てばよいというわけではなく、研究成果が幅広く人類社会の発展に貢献できるのであれば…

女性リーダーが直面する数多くの困難や障害をどう取り除くか

HR

組織において、女性のリーダーは、男性のリーダーが経験しないような数多くの困難や障害に直面する。これが、企業における女性役員の割合、女性管理職の割合の少なさに大きく影響している。日本では特にこの傾向は顕著だと言えよう。このような女性リーダー…

探索的因子分析の直感的理解

因子分析はいわば心理統計のハイライトであり、経営学においても、心理的アプローチをとる場合、非常に重要な分析である。しかし、とりわけ探索的な因子分析を理解するためには線形代数の知識が必須であるため、文科系の人々の多くは理解の途中で挫折してし…

「データを拷問にかけ自白させる」「セレンディピティ主義」の危険性

フランシス・ベーコンが言ったとされる有名な言葉に、実験とは「自然を拷問にかけて自白させること」だというものがある。自然科学は経験データとの整合性が必須なので、特定の法則性が自然に備わっているならば、その自然が自分でそれを語らざるをえない状…

「系統樹思考」とは何か

この世の森羅万象をいかに体系化し、理解するかは人類共通の課題といってよいだろう。私たちが、多様なものを整理し、知識として体系づけようするのは自然な行動である。これに関して、三中(2006)は、生物学における進化思考をより一般化し発展させた「系統…

朱子学・陽明学が説く儒教的な宇宙認識とは

小倉(2012)によれば、儒教の中でも朱子学は、変革と躍動と生命の思想であり、陽明学は、朱子学を継承しつつそれを批判・超克した「心の哲学」である。朱子学で最も重要な概念が「理」と「気」で、陽明学では「良知」や「万物一体の仁」に重点が移行する。た…

捨てることで論文は強くなる

論文を作成する際に犯しがちな誤りは、色々な要素を盛り込むと論文のクオリティが向上するという思い込みである。この思いは、理解できなくはない。例えば、データを分析した結果、これも面白い、あれも面白い、というようにたくさんの発見が得られるかもし…

論文のオープンアクセス化という新しいビジネスモデル

学術界では、自分が活動する研究分野のいわゆるトップジャーナルに研究成果を論文として掲載されることを最優先の目標として設定することが多い。なぜならば、トップジャーナルは、その研究分野において最も高水準な論文を、厳しい審査を通して選びすぐった…

「平均への回帰」は因果関係とは異なる

背の高い親の子供の身長は親よりも低くなる傾向がある、1年目に好成績をあげたプロスポーツの新人は、2年目に振るわないことが多い(2年目のジンクス)といった現象がよく見られ、これを「平均への回帰」という概念で説明することが多い。平均への回帰と…