日本的人事制度の再評価

1980年代、不況にあえぐ米国企業にとって、競争力を取り戻すためのお手本となったのが、日本の雇用慣行であった。いわゆる、終身雇用、年功序列、企業内労働組合三種の神器に代表される日本的雇用慣行は、その企業の競争力にもたらす長所が分析され、アメリカやその他の国の文脈に適合するかたちで応用されていくようになった。


そのような経緯を経て発展したのが、資源論アプローチであり、組織志向型の雇用慣行であった。つまり、人的資源を持続的競争優位性の源泉ととらえ、それを拡充する雇用システムが望ましいという考え方である。


ところが皮肉なことに、当の日本は、その後、バブル崩壊を経て業績不振に苦しむようになり、組織志向型の持つ短所が目立つようになってきたといえる。それは、長期安定雇用に代表される特徴からくる人件費負担である。これらの問題を短期的に解消する手段としてもてはやされたのが、マーケット志向型雇用制度であり、成果主義や雇用の外部化というトレンドである。


つまり、戦略論や人的資源管理論が提唱してきた雇用システムのあり方に逆行するようなかたちで、わが国の雇用変革は進んでいったかのように見受けられるのである。