「勢い」の重要性

守屋(2004)は、孫子の「善く戦う者は、その勢は険にして、その節は短なり・・・(激しい勢いに乗じ、一瞬の瞬発力を発揮するのが戦上手の戦い方だ。弓にたとえれば、引きしぼった弓の弾力が「勢い」であり、放たれた瞬間の矢の速力が「瞬発力」である)」を紹介している。


つまり、勢いの持つ力を「孫子」は、勝利への要諦の1つとしていたという。自軍を勢いに乗せてしまえば、その破壊力で敵はなぎ倒せてしまうと。たしかにスポーツでも、弱小チームが勢いに乗って何連勝もしてしまうという光景を見かける。勢いをうまく活用できれば、弱者が強者をなぎ倒す原動力にさえなりうるというわけだ。例えば孫子は、勢いを出すために部下を窮地に陥れて火事場の馬鹿力を出させることを考えた。


しかし同時に、「勢い」はいつまでも続かないと守屋は指摘する。ペナントレースでスタートダッシュを決めた弱小チームが、数ヵ月後に最下位に逆もどりといった例のように、「勢い」はもっとも乗っているときにうまく使わないと、やがて消え去ってしまうのである。