水のような組織

守屋(2004)は、逃げることや退却を支柱とした戦略や組織を「孫子」と絡めて解説している。例えば、一見するとネガティブな「逃げ」や「退却」をうまく活用し、自己の勢力を維持・拡大しながら、やがて強大な敵を倒してしまう。その核心を一言でまとめると「ライバルや環境のめまぐるしい変化にあわせて、いかに柔軟な進退ができるか」が勝負になるということだと説明する。すなわち状況に合わせた柔軟な進退を可能にする戦略や組織の重要性である。


そしてそれは「水」を理想とする戦略や組織ということに他ならないと守屋は指摘する。「兵の形は水に象る(戦闘態勢は水の流れのようであらねばならない:虚実篇)」と孫子にある。状況に応じて水のように姿を変えるということである。またトム・ピータースによると、生き物のように柔軟で、人間的な活き活きとした組織とは「透明」「輪郭がない」「絶えず変化しつづける」「常時姿を変える」「不定形」と表現しているが、これも「水のような組織」ということになる。