流れを心得れば負けなくなる

桜井(2009)は、流れを感じ取る力が勝負で負けない技術につながると示唆する。桜井によれば、勝負も我々が生きる社会も、自然界における川の流れも雲の流れも、絶えず変化している。物事は変化して当然なのだ。いいときもあれば悪いときもある。寄せる波はやがて引くのが自然の摂理だ。勝負の世界の流れには正しいものもあれば間違ったものもある。正しい流れならば正着を打っていれば流れに乗れるが、間違った流れのときは流れに乗れない。間違いの流れは、荒れた海のようなものだからだ。


流れを感じることを大切にしている人は変化に強いと桜井は言う。なにがどう変わっているのかを感じ取ることができるから、時の流れにもついていける。勝機の存在を「風」に例えれば、目に見えないが「強い風だなあ」とか「気持ちのよい風だなあ」と感じることはできる。チャンスや運は風のように動いている。これを感じとる力が必要だ。流れを感じる力を磨くには、自然を師匠にするだ。風や雲、川などを見ていれば、自然の流れを感じることができる。それと同じような流れの感覚を自分の中に見つけていけばよい。また、相手や全体の流れを目で見るように追うのではなくて、耳を澄ませるようにして感じ取るのが重要だと桜井は指摘する。


勝負において「ブレない軸」を持つとは、無駄な力が取れた動きができることだと言う。ふわっと流れに身を任せているような状態で、相手が攻めてきた力を吸収して、そのまま跳ね返すこともできる。流れを感じることができる人は強い軸を持っているのである。勝負において「いい間合いを取る」というのも、流れに身を任せているのと似ている。流れを感じながら、間合いを取るのである。


桜井は、「勝負所」で臨機応変に動けるようにしておくこと、チャンスに追いつけるように、脚力、瞬発力を磨いておくことも重要だと言う。例えば麻雀には大きい流れもあれば小さい流れもある。大きい流れのときに小さな手で和了っても流れには乗っていけない。逆に小さな流れのときに大きな手で和了としてもうまくいかない。海の凪のように荒れない場もあれば、大嵐のような荒れ場もある。荒れ場のときは荒れた流れに乗っていかなければならない。小場のときは荒れないように打つ。その場の流れに合わせつつ、勝負所が来たら果敢に攻めるのである。