流れを読み、ツキを味方にする方法

桜井(2010)によれば、ツキとか運には3種類ある。まず、天から授かる「天運」で、これは人間の力ではどうにもならない。もう1つ人間の力ではどうしようもないのが「知運」である。これは場所につく運である。この2つは「自然」から与えられる運であるが、3つ目の人が作り出す運があり、これを「人運」と桜井はよぶ。人運は、それぞれの人が、それぞれの感性や行動によって作り出していくものだと桜井はいう。


桜井は、天運や地運、そして他人の人運を感じ取り、それらがどう交錯し、どう変化していくかを読み取って、その場その場で的確に対応していくことができれば、人運が強くなり、その人を後押ししてくれるようになるはずだという。つまり、つくかつかないかは人運によるところが大きいのだというのである。


ツキというのは一瞬一瞬、流れを変えていく。天運・地運・人運が複雑に絡み合っていることもあり、その流れを読み取るのはなかなか難しい。しかし、桜井は、強い人運を作り出す行動様式や生き方を身につけ、毎日をしっかりと生きることで、悪い天運・地運に立ち向かい、良い天運・地運を逃さず、最大限に活用できるようになるという。例えば「気分よく生きる」。これは、自然に溶け込んで、自然と一体になったときに身体が感じる喜びである。気分がよいときは感覚が素直になっているので、ツキを掴みやすくなるのだと桜井は指摘する。


桜井は「囚われない」ことの大切さも強調する。世の中は万事万物、時々刻々と変化しているため、1つのことに囚われた瞬間に、他の部分の変化を見逃してしまう。例えば麻雀で勝つためには、自分の手ばかりでなく、相手の動向を読み、牌の流れを見定め、場の空気を感じながら、変化していく情勢に合わせて、柔らかく動いていかねばならない。何をやるにしても、非常に多くの要素を多面的に感じつつ、柔軟に変化していくことが必要だと桜井はいうのである。


また「後回し」は「間に合わない人」につながり、ツキを逃すことにつながると桜井はいう。先を読みながら、常に次の行動を準備しておく必要がある。そして、場の流れを感じながら、常に先、先を読んで、その流れにふさわしい対応へと修正を加えていくのである。


流れが悪くても、正しい手順を堂々と打ち続けるような態度も重要だと桜井はいう。例えば、スランプは、不調の原因を修正できなかったり、不都合な流れに対して的確に対応できていない状態であるといえる。通常の「正」の流れではなく、「負」の流れに巻き込まれて自分を失っている。そこで理屈をこねくり回して考えたり、小手先のテクニックで何とかしようとしても、もがけばもがくほど逆流に翻弄されることになる。この場合は「一歩退き」「肩の力を抜く」ことで、冷静さを取り戻し、自分のフォームの乱れにも気づいて、素直に修正することができるという。


つまり、ムダな力を使わず、周囲の景色をよく眺めながら、どこまでも流されていく。そのうちに必ず、流れが変わるポイントに気づくので、そのときに渾身の力を込めて下流から上流にむかって泳ぎ始めるのだという。その際、流れの変化は目で見るのではなく、空気やその場の微妙な変化を悟って、感覚でとらえるのが大切である。目先の損得に囚われず、悪い流れであるならば、良い流れにするよう正しい行動を心がけるわけである。それは、自分でなんとかできるチャンスを自力で作っていくことでもあるという。