ミスがミスを呼ぶメカニズム

ミスがミスを呼ぶ状況、あるいは大きな流れに呑み込まれ、悪循環に陥るという状況はよくある。これに関し、羽生(2010)は、ツキや運というのは、個人のレベルだけでなく、組織、団体、国のレベル、時代のレベルでも存在し、たくさんの要素があるからこそ、一定のところにとどまるのではなく、複雑に絡み合って変化し続けていくものだという。よって、ミスにミスを上塗りするようなことをして流れを悪化させないことが重要だと考えられる。


ミスがミスを呼ぶことについて、羽生は、ミスの後にこそ、ミスが再び起こりやすいためだと指摘する。まず、精神的な動揺が大きく影響している。それによって気持ちの面での揺らぎ、落ち着きのなさが出てきて、冷静な判断ができなくなる。もう1つの要因は、ミスをしてしまった後の状況そのものが、事態を複雑にしてしまっていることだという。それまでは、順調に進んでいたために、次に何をすればよいか、どのように考えればよいかがクリアでわかりやすかったので、選択肢も簡単で状況もシンプルなので好循環が継続していたということになる。ところがいったんミスをすると、これまで築き上げてきた良い流れが完全に断ち切られる。その状況は、前よりずっと複雑であったり、混沌としていたり、さまざまな要素が絡み合っているケースが多いのだという。


だからこそ、ミスをしたときには、まずは状況を冷静に整理し、シンプルに考えていく。そしてミスをした事実を頭から消して、新たなスタートを切ることが重要だと羽生は説く。うまくいっていないときは、状況が複雑であったり、混沌としていたり、余計なものがあったりとかいろいろな障害があるものなので、こうしたものがどんどん出てきたときは、流れが悪くなったということであり、こうしたものが取り除かれ始めると、流れが良くなったということだという。必ず何かのきっかけがあるので、流れを見極めるためには、それをとらえることだが重要だという。