水の力強さに学ぶ

守屋(2008)は、中国の兵法書をひき「水はきわめて柔弱であるが、行く手をさえぎるものは、たとえ丘陵でもうちくずしてしまうので、変幻自在な戦略に基づいて水のように行動するならば天下に敵するものはないという言葉を紹介している。


守屋によれば、水は力強さの象徴でもある。中国の兵法書が念頭に置いているのは、清流とか小川のせせらぎでなく、長江とか黄河といった大河である。遠くから眺めると流れているのかもわからないほど静かでありながら、近づくと濁流がものすごい渦を巻きながら流れている。落ちたら一巻の終わりだと思わせる恐怖心をいだかせる流れである。


「激水の疾くして石を漂わすに至るは、勢なり(孫子)」という言葉があるように、流れに勢いがあれば、ものすごい力となる。水の持つ柔軟性、謙虚さ、力強さに学び、しなやかに生きる術を学ぶべきである。


勢いをうまく利用することも大切である。じっくりと時を待って、勢いに乗じるのである。逆に勢いの盛んな敵にぶつかった場合というのは、渦巻く激流のようで、容易には近寄りがたいが、その流れを分散して、幾つもの水路に誘導していけば、水の力を弱めることができる。よって、勢力を分散させて、攻撃を加えるのがよい手段ということになる。