西野(2005)は、格言を通じて相場を読み、勝つためのヒントを提供している。例えば「大欲は無欲に似たり」という言葉があるが、目先の動きばかり追いかけても器用貧乏になって大きな利益は得られないので、気を大きく持ち、腰をすえて大局を見ることが大切である。大きく相場をとろうと考えれば、目先の動きにこだわらず無欲に見えるが、泰然自若として相場の行方を静かに見守ることができる。
「相場の金と凧の糸は出し切るな」という格言もある。凧をあげるコツは、糸を巧みに調節しながら、うまく風に乗せることなので、糸を出し切らないで余裕を持っていることが大切である。相場も同じであると西野は言う。相場の本質は、揺れ動く幡としての相場、それを揺らす風としての材料、相場や材料を見て心を動かされる人間心理が三位一体となって動くところにあるので、この3つを三位一体として感じとることが重要である。本間宗久の「三位の伝」は、禅で言う悟りの世界である。
「始めを慎む」というように、相場では最初が肝心である。相場の流れをよく見極めたうえで、これなら大丈夫だという自信を持ったら、思い切って買うのがよい。そして、相場の流れに逆らうような売買をしてはならない。相場の流れは個人の力ではいかんともしがたく、流れにさからってみても、流されてしまうだけだという。銘柄選択においては、相場の流れ、勢い、市場の人気などを見て、この銘柄なら、ほかの投資かも魅力を感じて買ってくれるだろう、という銘柄を選択するのがよい。
水も静かに流れているときは、とてもおおきな岩石を動かす力などないが、水かさが増し、激流になると、その勢いで大きな岩石をも軽々と押し流してしまう。戦う場合は、万全の体制を整えたうえで、勢いに乗って攻めることが勝利の秘訣である。相場でも、力強い上昇相場となって勢いがあるときには、その流れに逆らうと大失敗する。相場に勢いがあるときには、その勢いに素直に乗るか、その勢いに異常を感じれば「休むも相場」だという。
チャンスが来るまで待つ忍耐も大切である。自分に打ち勝つことができず、慌てて投資・投機を行えば失敗しやすくなる。何をやってもツキに見放され、ことごとく裏目にでることもある。そのときに、焦っていろいろなことをやれば、ますます不運の深みに落ちることがある。しばらく休んで、ツキが戻ってくるのを待つのがよい。相場の見通しが難しく、先行きが不透明なときも、休んで様子を見るべきである。