投機学

市場経済はある法則どおりに動いてきた。それは「万人悲嘆のなかで上昇相場は始まり、万人疑惑のなかでそれは育ち、万人幸福感のなかで下降を迎える」ということだ。これさえ知れば、市場のかなりの部分は理解できる(山崎 2007:20)

投機とは「機というある一点において、不確かな情報のもとで的確な判断をなし、合目的的に全知全能を集約させる意欲的、情熱的行為」なのである(山崎 2007;30)

「相場に向かうべからず。機に乗ずべし」という古い格言がある。・・・
・・・「相場と戦う」なんて大それたことを言わず、「謙虚に」現象をあるがままに見ると、「受けて立つ基本姿勢」がとれるようになる。戦うのではなく、「巨大な動き」を主人公として迎え入れて、自分はそれを受け入れるというスタンスだ。・・・別の表現で言うと、相場の動きを確かめてから動く、ということになる。・・・動きの方向を確かめてから(後手)、次の動きの前に手を打つ(先手)、というのが賢いやり方で、剣道で言う「後の先」をとるということになる(山崎 2007:223-224)。

穏当の投機家は、投機のジャングルに出かけるときは緑の保護色をまとい、そうでないときは普通の社会人としての保護色をまとっている。普段はベーシックな業務に精を出し、腹七分目でサッサとカジノを去っていく。そして何年間でも次の機会を待って読書三昧に夜を過ごし、バブル真摯の没落のプロセスなどを醒めた眼で観察しているものだ(山崎 2007:51)

元来、チャート論というものは「現象を観測して次の現象を予測する」という極めて自然科学的態度に基づくものであり、その基礎には「観測して推論する」という理性に対する信頼が厳存する。・・・長期トレンドは満潮と干潮のようなものである。強気市場を満ち潮にたとえるなら、引き潮に転ずるまで水位は上がり続ける。しかし、潮目が変わるまでは並は押し寄せたり引いたりするが、押し寄せても満潮時の線までは来ないし、引いても干潮時の線までは引かない。これが市場の大きなトレンドの間にある中期波動である。一方、海面では海の方向とともに動いたり反対に動いたりする漣によって絶えず振動している。これが市場の短期波動である。・・・天体の運動や物理運動と違って、その市場自体が過去の運動を記憶しているということである。故に、市場は自己実現的運動を起こすことが多い(山崎 2007:99-100)