巡環の思想

中野(2009)は「循環」とは異なる「巡環」という言葉を用いて、巡環力を説いている。


中野によれば、人は目に見えない何かを、いつも他人や自分と巡らせている。この巡らせているものの質によって、目に見えるものが作られていると考える。この巡りを「巡環」としてとらえる。そう考えると、人生や仕事で一番大切なことは「無理なく巡るサイクル」を作るということになる。「巡環力」とは、目には見えないけれども自分を中心に確実に巡環している経路のことを知り「好ましい巡環を作る力」のことである。巡環力は、正のスパイラルを生み出す力でもある。


巡り、廻り、還る、というサイクルは、自然のサイクルそのままであるから、巡りだせばうまくいく。水も流れているからこそ水といえる。留まると腐るのである。相場にしても、生き物のように巡環するからこそ、弱気のあとに強気が来たり、高騰の後には急落があるように、自ら浄化作用を持つ。


巡環の思想では、自分のためにすることが、巡り巡って人のためになる、ということも重要である。自分自身が楽しく、生き生きとできる仕事をすれば、それが周りも幸せにしてくれることにもつながるだろう。


また、巡環の様子をとらえるためには、何か問題がある場合、その問題にのみフォーカスをあてず、その周りも含めてホリスティックな視点から俯瞰することも大切であると中野は説く。