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組織行動のコンピュータ実験室

組織のゴミ箱モデル 組織構造と組織行動 チーム・集団力学 組織学習 組織文化、組織内浸透 オープン・ライブラリー www.comses.net

経営学における「必要条件分析(necessary condition analysis)」の重要性

経営学においては、あるいは経営学のみならずさまざまな学問分野において、因果関係を論じることは理論構築の本質的作業である。しかし、気を付けなければならないのは、因果関係を論じる際に、「必要条件」と「十分条件」そして「必要十分条件」の違いを明…

「対話」としての学術論文

個別の研究課題は、学術論文として学術雑誌に掲載された時点でいったん終了する。とはいっても、学術雑誌に掲載させるまでの道のりは平たんではなく、投稿先雑誌の選定から投稿、改訂のうえ再査読などを経て掲載決定に至るが、とりわけ影響力が大きいトップ…

統計学の認識論:ベイズ主義と頻度主義

大塚(2020)は、統計的手法とは特定の科学的仮説をデータから正当化するための認識論的装置であるという視点に立ち、帰納推論によって真実に近づこうとする統計学が、いかなる形でそれによって得られる信念を知識として正当化できるのかを、ベイズ主義と頻度…

統計学はどのように世界を理解しようとするのか

大塚(2020)によれば、統計学、とりわけ推測統計は、「帰納論理」「帰納推論」を通して世界を理解しようとする学問であり、統計学自身が、一定の存在論的前提に立つ科学認識論でもある。 一般的に、与えられた経験、観測、データをもとにして、まだ観測されて…

ベイズ主義、尤度主義、頻度主義の関係性

科学は、数学のように論理のみで閉じた世界ではなく、理論や仮説を常に経験(証拠)と照らし合わせることで発展する。観測から得られる経験や証拠には確率的要素を排除できないため、科学的方法の根幹を支えるのが、統計的推論であるといえる。研究の過程で…

経営学における「探求する精神」:基礎科学から何を学べるか

経営学は応用的な学問分野であるため、「経営学は実務の役に立つのか」というのは常につきまとう問いである。実務の役に立つ経営学研究はどのようにすれば可能なのかという問いに置き換えてもよいだろう。今回は、この問いに答えるために、大栗(2021)が基礎…

「平均値に差がない」という仮説を検定する方法の直観的理解

基礎的な統計学において必ず学ぶのが「平均値の差の検定」である。これは、2群の平均値に差があるという仮説がデータから指示されるかを検証する方法で、最も基本的な方法は、帰無仮説と対立仮説を立て、t検定によって検証するという方法である。「平均値に…

経営戦略論で内生性(endogeneity)が大きな問題となるのは何故か

経営戦略論の研究で頻繁に問題となるのが、実証研究における内生性(endogeneity)という問題である。その理由として、内生性は、とりわけ戦略論という経営学の中の1分野が対象とする領域や理論、および戦略論で頻繁に行われる実証研究の方法と深く関連してい…

経営学の役割は、意思決定に役立つ知識・情報を提供することである

経営学の目的は何かと聞かれれば、それは企業経営に対して正解を与えることだと答えるかもしれない。しかしそれは違うといいたい。経営学は、現状の経営状態に困っている経営者に対して、処方箋を与えるものではない。経営を改善するための経営手法を生み出…

組織行動論・人的資源管理論のためのR入門

統計分析をするためのソフトはたくさんあるが、近年、もっともよく使われ、標準になりつつあるのがR言語である。R言語の良いところは、フリーソフトウェアであるため、誰もが自分のPCにインストールして利用できる点である。フリーソフトウェアであっても…

筋の良い研究と筋が悪い研究とは何が違うのか

将棋や囲碁において筋の良い手と筋の悪い手が存在するように、経営学に限らず学術研究にも、筋の良い研究と筋の悪い研究が存在するように思われる。ただし、「筋の良い研究=優れた研究」「筋の悪い研究=ダメな研究」というわけではないことに注意されたい…

APA Publication Manualで学ぶ経営学研究法

APA Publication Manualは、米国心理学会が標準としている論文作成のための規則であるAPA styleを詳細に解説したマニュアルである。米国心理学会による標準だといっても、心理学にとどまらず、経営学やその他多くの社会科学などのジャーナルで標準になってい…

学術論文の考察(Discussion)の書き方

学術論文を執筆する際、冒頭(Introduction)、理論や仮説、方法と結果までに力を尽くし、それらが完成すればおおよそは論文は完成に近いと思うかもしれない。そして、考察(Discussion)は、論文の「おまけ」のように思うかもしれない。しかし実は、優れた考察…

対数正規分布が世の中の主要な統計分布である理由

松下(2019)によると、世界の物事のほとんどは、統計的に分布をとると、正規分布、べき乗分布、対数正規分布の3種類のどれかに近い形になる。正規分布は左右対称の釣り鐘型の頻度分布であり、べき乗分布は右肩下がりで頻度が同じ割合で減少し続ける代表的な…

単純傾斜分析(simple slope analysis)の直感的理解

独立変数間の交互作用を含む重回帰分析において、交互作用が有意になった場合に、その交互作用の特徴を理解するために行われる分析の一つが、単純傾斜分析(simple slope analysis)である。この手法は、経営学や組織行動論などにおいては頻出の分析であるとい…

どうすれば実践に役立つ論文を書くことができるか

経営学は学問である。よって、経営学の研究および論文には、理論的貢献や厳密な方法論が求められることは言うまでもない。同時に、経営学は応用学問であるから、経営の実践に対して役立てることも念頭に置かなければならない。経営学の学術論文は、同業者に…

重回帰分析における相対的重みづけ分析(relative weight analysis)の直感的理解

経営学や組織行動などの研究で最も頻繁に使われる統計分析の1つが、重回帰分析である。重回帰分析では1つの目的変数を複数の説明変数で予測しようとする。この重回帰分析の際にしばしば生じる研究上の関心は、複数の予測変数の相対的な重要度(relative impo…

マネジメントジャーナルが掲載する論文にはどのような貢献が求められるのか

経営学(マネジメント分野)は、心理学や経済学などと比べると、より学際的な要素の強くかつ実践的な貢献も求められる学問分野である。また、Academy of Management Journal (AMJ) のような総合的なマネジメントジャーナルは、Strategic Management, Organiz…

経営学研究でどのように実践へのインパクトを生み出せばよいのか

経営学は応用的学問でもあるため、研究するにあたっては当然のことながら、この研究がどのようにして経営の実践に影響を与えることができるのかを考えざるを得ない。そして、実践へのインパクトに関する、実務家からの批判も、経営学内部からの自己批判もあ…

マルチレベル分析で説明変数を中心化する際のポイント

マルチレベル分析を実際に行うときによく出てくる疑問として、説明変数を中心化(センタリング)すべきかどうかというのがある。とりわけ、マルチレベル分析では、説明変数を集団内での平均値を用いて中心化する方法(集団平均中心化:group-mean centering)…

学際的理論構築の作法

経営学は基本的に学際的な学問である。経営学という独自の方法論が存在するわけではなく、経済学、心理学、社会学、人類学、政治学などから関連する概念や理論、方法論を借用することで、経営にまつわる現象の理解を志向してきたのである。よって、理論構築…

構造方程式モデリング(SEM)においてアイテムの小包化(parceling)をするべきか

構造方程式モデリングあるいは共分散構造分析は、経営学をはじめとする社会科学で頻繁に用いられる統計分析手法である。構造方程式モデリングを用いる利点の1つは、研究の対象となっている構成概念(実際は測定できない抽象的な概念であるが、なんらかの測…

ブートストラップ法の直感的理解

経営学においても近年よく用いられる統計手法として、ブートストラップ法(bootstrap method)というのがある。これは、リサンプリング(再抽出)という統計手法の1つで、似たようなものに、ジャックナイフ法というのもある。ブートストラップ法とは、何をね…

内生性、内生変数とは何か

経営学のみならず、経済学その他の研究におけるデータ分析で起こりうる問題としてよく指摘されるのが「内生性(endogeneity)」とか「内生変数(endogeneous variable)」である。しかし、この概念は英単語としても難しいし、何を意味しているのか分かりにくい。…

『職業としての小説家』から考える職業としての研究者

村上(2015)は、自分自身が「あまりにも個人的な考え方をする人間」であり、「ある意味では身勝手で個人的な文章」と断りをいれつつも、誰のために、どのように、そしてなぜ小説を書くのかなどについての自伝的エッセイを披露している。村上の「職業としての…

赤池情報量基準(AIC)とは何か

経営学をはじめとする学術研究のうち数量的研究では、検証したい理論や仮説を数量的にモデル化し、収集したデータを用いた統計分析を実施することで妥当性を検証する。その際、個々の仮説、例えば個別の変数間の関係を検証するのみならず、構築したモデル全…

統計分析において誤差分布が極めて重要な理由

経営学をはじめとする学術研究のうち数量的研究では、検証したい理論や仮説を数量的にモデル化し、収集したデータを用いた統計分析を実施することで妥当性を検証する。統計分析について、一見するとあまり脚光を浴びていないように思えるが実は極めて重要な…

グラウンデッド・セオリー・アプローチを支える3つのパースペクティブ

グラウンデッド・セオリー・アプローチとは、質的研究の1つで、リアルな世界に立脚した形で理論を構築したり理論を精緻化するための方法論である。リアルな世界の現象をとらえた具体的な質的・量的データから出発し、データを分析することで、新たなアイデ…

優れた理論とは何か

経営学に限らず、学問の世界では、優れた理論の構築が目的とされる。優れた理論は、人々の世界観や思考・実践のあり方を変え、世界を変える力を持っている。では、優れた理論の条件とは何だろうか。Gligor, Esmark, & Gölgeci (2016)は、先行文献をまとめつ…