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統計分析において誤差分布が極めて重要な理由

経営学をはじめとする学術研究のうち数量的研究では、検証したい理論や仮説を数量的にモデル化し、収集したデータを用いた統計分析を実施することで妥当性を検証する。統計分析について、一見するとあまり脚光を浴びていないように思えるが実は極めて重要な…

グラウンデッド・セオリー・アプローチを支える3つのパースペクティブ

グラウンデッド・セオリー・アプローチとは、質的研究の1つで、リアルな世界に立脚した形で理論を構築したり理論を精緻化するための方法論である。リアルな世界の現象をとらえた具体的な質的・量的データから出発し、データを分析することで、新たなアイデ…

優れた理論とは何か

経営学に限らず、学問の世界では、優れた理論の構築が目的とされる。優れた理論は、人々の世界観や思考・実践のあり方を変え、世界を変える力を持っている。では、優れた理論の条件とは何だろうか。Gligor, Esmark, & Gölgeci (2016)は、先行文献をまとめつ…

数量的研究の論文を査読する際のチェックリスト

研究者であれば、同分野の雑誌に投稿された論文を査読する機会が増えてくる。投稿論文の査読は、投稿された論文の内容を、科学的厳密性、妥当性の観点から批判的に評価することである。批判的評価といっても、当然分野によってその判断基準が異なってくるこ…

なぜ分散分析で平方和や平均平方という用語が使われるのか

分散分析について初めて勉強するとおそらく混乱すると思われる言葉が、平方和や平均平方である。分散分析なのだから分散という言葉を用いて説明してほしいのに、平方和とか平均平方がでてきて混乱するのである。平方和については、偏差平方和とか、残差平方…

正規分布の解剖学

統計学の中でももっとも重要な概念といってもよいのが、正規分布である。正規分布は、世の中の本質を表しているといってもよい概念でありながら、式を見ると複雑でかつミステリアスである。実際に、正規分布の式は、分布の平均をμ、分散をσ^2とすると以下の…

信頼区間と確信区間はどう違うのか

統計学では、母集団からサンプルを採取し、そのサンプルの情報から、ある値を推定する。その際、推定した値の信頼区間(confidence interval)や確信区間(credibility interval)を構築する。信頼区間と確信区間は、紛らわしいが似て非なるものである。豊田(201…

ベクトルと三角関数を用いた相関係数の理解

相関係数は、2つの変数の関係を表す統計指標である。XとYの2つの変数があるとすると、Xが上がった場合にYも上がる度合が強ければ、XとYの相関は正であり強く、Xが上がったときにYが下がる度合いが強ければ、XとYの相関は負で弱い。Xが動く方向性とYが動く…

なぜ分析結果を見てから仮説を作った論文はリジェクトされるのか

HARKingとは、Hypothesizing After the Results are Knownの略語で、データを分析してみて結果を見てから、それにフィットするように仮説を作り、あたかもその仮説がデータ収集よりも先に存在していたかのように論文化していく行為である。このような行為は…

組織行動学におけるシナリオ実験の有効性

組織行動学の実証研究で主流なのは、サーベイ研究である。いわゆるアンケート調査である。サーベイ調査の大きな利点は、実際に組織で働いている人々を対象とするために、調査の妥当性が高いことである。一方、欠点は、実験のように因果関係を厳密に検証でき…

HARKing, p-hacking, asterisk-seekingを助長している学術界

物事の本質に迫るため、正しい研究を行い、正しい報告を行うことは研究者の使命である。しかしながら、経営学を含め、多くの学問で、そのような適切な研究のあり方が危機に陥っている。学術界の社会制度自体が、研究者による不適切な研究を助長しているとも…

理論論文の3つの文法とそれぞれの形式で優れた論文を執筆する秘訣とは

仮説検証型の数量的な実証研究などに比べ、新たな理論の構築や視点の提供を目的とする理論論文の場合、さまざまな論文形式が存在し、論文執筆のテンプレートやレシピのようなものは存在しない。むしろ、新たな理論やコンセプト、視点を提唱するための論文で…

理論論文の5つの構成要素とその使い方

経営学において最も優れた理論論文を掲載している雑誌のひとつが、Academy of Management Review(AMR))である。この雑誌から様々な革新的な理論が提唱されてきた。では、AMRに掲載されるような優れた理論論文はどのような特徴を持っているのだろうか。Lange …

知のパッケージ化、流通、共有

私たちは、物事を判断したり意思決定したりする場合には「考える」必要がある。より深く理解したり、根源的に考える場合には、より厳密に、論理的に考える必要がある。しかし、すべての事柄を、深く、根本的に、厳密に、論理的に考えられるほど私たちの能力…

統計分析で「p < .05」にこだわることが不適切な理由

経営学や心理学を始めとする多くの社会科学で仮説検証型の実証研究を行うとき、p値が重要な役割を果たしているように思える。とりわけ、「p アスタリスク「*」に着目することで研究の良し悪しを判断したりする。しかし、最近は、このような傾向が不適切であ…

物語分析とは何か

田村(2016)によれば、物語分析とは、単独・理論事例を対象に「結果発生過程のダイナムズムを追う」分析手法である。単独・理論事例とは、統計分析のように複数のデータを比較するものではなく、また、歴史研究のように個別的かつ具体的な「事件」の連なりを…

持続的に研究業績を出し続けるための長期戦略

研究者にとって、研究成果を論文化しジャーナルに掲載させ続けること、すなわち研究業績を出し続けることは重要である。しかし、さまざまな理由によって、持続的に研究成果を出し続けることには困難が伴う。例えば、博士論文で取り組んだ研究テーマはしばら…

学術論文を量産する方法

研究者にとって、研究成果を論文として学術雑誌に掲載させることは重要な使命である。では、どうすれば学術論文を量産できるのだろうか。Campion (2011)は、学会賞授賞式でそのためのコツを伝授している。 研究生産性を高める方法 ハードワーク、長時間ワー…

査読論文投稿後の最初の関門「首尾一貫テスト」

Hodgkinson (2016) によれば、査読ジャーナルのエディターや経験豊富な査読者は、たった数分で、投稿論文が掲載されるポテンシャルを有しているのかを判断するためのテスト方法を知っている。投稿された論文がこれを通過できなければ、投稿論文や査読に回さ…

論文作成で日本人が習得すべき「アンパッキング」と「理由warrant」の技法

吉岡(2015)は、「シカゴ・スタイル」という世界標準の論文作法に基づいた文章上達術を説いているが、その中で、日本人や初心者が苦手なものとして「アンパッキング」と「説明(warrant)」を紹介している。 アンパッキングとは、自分がいったん述べた内容を、…

最尤推定法を理解する

回帰分析における最小二乗法は理解していても、一般化線形モデルなどにおける最尤法について理解できていないというケースも多い。久保(2012)によれば、最尤法もしくは最尤推定は、統計モデルのパラメータを推計する方法の1つであり、尤度というモデルの当…

非常に使い勝手が良い統計モデル:GLMとGLMM

GLM(Generalized Linear Model:一般化線形モデル)およびGLMM(Generalized Linear Mixed Model: 一般化線形混合モデル)は、広範囲に適用可能で非常に使い勝手が良い統計モデルである。GLMやGLMMでは、いわゆる最少二乗法を用いる回帰分析やロジスティック分…

よい研究トピックとは、よいリサーチクエスチョンとは、よい仮説とは

研究をするうえでまず決める必要があるのが、何について研究するのかという研究トピックであり、何を明らかにしたいのかというリサーチクエスチョンもしくは研究目的である。これは、とりわけビギナーにとっては、簡単に見えて意外と難しい。 まず、研究トピ…

「説明」と「解釈・理解」はどう違うか

保城(2005)は、「説明(explanation)」とはいったいなにかという問いを発し、説明という概念は3つの意味で使用されていると主張する。1つ目は「因果関係の解明」という意味であり、多くの実証主義者の間では主流となっている見方である。説明される現象(被…

いわゆる「理論」と「中範囲の理論」はどう違うか

保城(2005)によると、「理論」とは一般的に以下のように定義される。「繰り返して現れる(と考えられる)個々の現象を統一的に、単純化・抽象化されたかたちで説明でき、十分に検証もされている体系的知識」。この意味で、理論構築を目指す研究は、「法則定…

最尤法と最小二乗法が母集団の確率分布が正規分布のときに同じになる理由

馬場(2015)によれば、最小二乗法とは、残差平方和(実際の値と予測値との差の二乗和)を最小にするようなパラメタを統計モデルに用いることである。一方、最尤法とは、尤度(そのデータが得られる確率)が最大になるようなパラメタを統計モデルに用いること…

分散分析・回帰分析を理解するために自由度・偏差平方和・平均平方の概念を頭に叩きこむ

そもそも、分散分析とは何だろうか。分散を分析することで何がわかるのだろうか。馬場(2015)によれば、分散分析は、「選択肢を変えることによって、平均値(期待値)が変わるか?」を検定したいときに使うという。このような理解は、回帰分析にも当てはまる…

モデルとは何か、統計モデルとは何か

研究の世界では、理論やモデルが登場するが、この中の「モデル」とはいったいなにか。これについて、馬場(2015)は次のように説明する。そもそも、世界は複雑である。そこで、この複雑な世界を人間が理解できるようにするには、単純化することが必要になる。…

なぜ世の中の分布の多くは正規分布に従うのか

正規分布というのは、富士山のように頂点があって裾野が広くて左右対称な分布である。そして、神秘的なことに、世の中の多くの分布が正規分布に従うといわれている。例えば、小学生や中学生の同一学年に全国学力テストを一斉に行ったとすれば、得点の分布は…

ノーベル賞につながる論文はどのように生まれたか

研究者の中には、何年もかけてたった1本の論文しか出版できないという人もいる。恐ろしく生産性が低いのではないかと思うであろう。しかし、それがノーベル賞を受賞するきっかけとなる論文だとしたらどうであろうか。恐ろしく生産性の高い、というか世界を…