持続的に研究業績を出し続けるための長期戦略

研究者にとって、研究成果を論文化しジャーナルに掲載させ続けること、すなわち研究業績を出し続けることは重要である。しかし、さまざまな理由によって、持続的に研究成果を出し続けることには困難が伴う。例えば、博士論文で取り組んだ研究テーマはしばらくは持続するが、そのうちネタが尽きてしまうだろう。また、移籍や昇進やテニュア取得のために業績を積み上げても、その目的が達せられた途端にモチベーションが途切れてしまうことも多い。大学運営への参加、ジャーナルの編集、学会の重職などによって研究活動を中断せざるを得ないことも出てくるであろう。そこで今回は、Wright(2016)による論考を参考に、持続的に研究業績を出し続けるための方法を考えてみる。


Wrightによれば、持続的に研究業績を出しつつけるためには、長期的な戦略を持つことが重要である。とりわけ、取り組んでいる研究分野における「大きな問い」は何かを考えることが大切である。1つ1つの業績でなく、研究者としてのキャリア全体で、どのような大きな問いに答えようとするのか、言い換えれば、当該分野にどのようなかたちで貢献しようとするのかを明確にしておくということである。そのような長期的視点を持ったうえで、新しい研究の機会を見つけ出し、機動的に資源を動員してその機会をモノにしていくわけである。そのようなプロセスを通じて、複数の研究プロジェクトのポートフォリオを推進していくことである。


このような長期的な戦略を実行していくためには、自分自身の経験・知識の蓄積やスキルアップを図ると同時に、ソーシャル・キャピタルを獲得し、研究チームを組成し、研究資金を獲得していくことが効果的であるとWrightは指摘する。研究業績としては、トップジャーナルへの論文掲載のみを追求していく必要はない。さまざまなタイプの論文やジャーナルに論文を投稿していくのがよい。典型的な理論論文、実証論文のみならず、実務雑誌への寄稿や、展望論文の執筆、ジャーナルの特集号の編集および巻頭論文、書籍の出版などを通じて、より幅広い読者をターゲットにしていくのも効果的な方法であることをWrightは指摘する。

文献

Wright, M. (2016). Sustaining a publication career. In T. Clark, M. Wright,& D. Ketchen (Eds.). How to get published in the best management journals (pp. 49-73), Edward Elgar Publishing.