研究者になるために必要なこと

酒井(2006)は、研究者として「どのように研究するか」が「何を研究するか」よりも重要だと指摘する。つまり、方法論を習得することがまず大切だというのである。科学的な発想や思考、問題を見つけるセンスから始まって、理論的な手法や実験的な手技に見られる基本的な勘所は、すべての分野に共通している。その意味で「どのように研究するか」という考え方や方法論をしっかり身につけておけば、どんな分野の研究でもできることになるというのである。


また酒井は「どのように研究するか」は、言い換えれば模倣の段階だという。そして「何を研究するか」は創造の段階だといえる。「1に模倣、2に創造」この順番が大切だというのである。幅広い科学の知識を吸収し、研究の仕方や考え方を確実に模倣したうえで、専門的な分野で創造的な研究に進むことが望ましいという。とにかくは模倣である。科学の知識だけでなく、その方法や考え方を含めて「模倣」することが、科学の「基礎体力」の習得につながるのである。


そして「究極」を目指すことである。物事を最後まで究めて、頂点を極める。究極の理論は、一切の無駄がなく普遍的な説明を可能にするものでなくてはならない。究極の研究は、最先端を目指して行けるところまで全力でやってみるということである。人事を尽くして未知の問題を明らかにしようと努力することである。


酒井はまた、研究者の成功の要素として「運・鈍・根」を挙げている。「運」は幸運のことであるが、「人事を尽くして天命を待つ」のように、あらゆる知恵を動員することで、逆に人の力の及ばない運の部分も見えてくるという。「根」は、根気すなわち「最後まであきらめない」ということである。「鈍」については、鈍であるほうが、先が見えないがゆえに第一歩を踏み出しやすい、頑固に1つの道に徹して大成しやすい、周りに流されないで自分の仕事に打ち込める、そして牛歩や道草をいとわない、という特徴を持ち、それが研究者としての成功につながるというのである。鈍に徹して失敗を恐れないことが重要なのだという。