負けない投稿論文・申請書の書き方

研究者にとって、投稿論文、申請書の執筆は重要である。どちらにも厳しい審査が付随する。いくら研究成果や研究計画の中身が優れていても、審査で落選してしまっては意味がない。では、非常に秀逸な論文や申請書を書いて、文句なく審査に合格することが理想ではあるが、なかなかそういうわけにも行かない。そうすると、現実的なのは「負けない論文・申請書」「しぶとい論文・申請書」を書くことである。もっと端的に言うならば、審査員にとって「落としにくい」ものにする必要がある。では、どうすればそのような論文や申請書が書けるのであろうか。


黒木(2011)は、このような点に関して、重要なのは「切り代(きりしろ)」を作らない文章を書くことだと指摘する。審査員は、申請書などを読むとき、優れた点を探すのと同時に、欠点を探している。「不採択」にする格好の材料が見つかると、安心して落第点をつけることができるからである。具体例としては、データの間違い、論理の飛躍、間違った現状認識、プログラムの意図の無視、規定違反などである。したがって、文章作成においては、徹底的に防御し「切り代」を作らないことが重要となる。特に、論文や申請書の書式(フォントや用紙サイズ、引用の仕方)、誤字・脱字、数値報告のケアレスミスなどには気をつけたい。とことん推敲が重ねられ、細部まで注意が行き届いている文書は、その道のプロが見ればすぐにわかる。時間をかけて丁寧に作られた文書、それゆえ情熱や信念が込められた文書は、審査員の心情としても、決定的な切り代がないと落としにくい。


切り代を作らないためには、論文投稿先や申請書送付先の雑誌やプログラムの目的を十分に理解していなければならない。黒木によれば、論文については、次のようなポイントが審査の対象となる。

  1. 発表するだけの新しい研究成果か
  2. 研究データは、確かな材料と方法によって出されたものか
  3. データの統計処理、図表、引用文献等に間違いがないか
  4. 論文は、分かりやすく論理的に書かれているか
  5. 結論は、データから論理的に導き出されたものか


申請書の審査については、次のようなポイントが重視されるという。

  1. 申請内容は、プログラムの目的に合致しているか
  2. 申請された課題は実施するだけの価値があるか
  3. 採択した場合、間違いなく実行され、目的を達することができるか


そして、黒木がメイン・テーマとする文章作成の最大の基本は<簡潔・明解・論理的>の「知的三原則」である。この原則を守り、分かりやすい文章を書くことが大切であろう。