ワーク・ライフ・バランス支援制度の効果

西岡(2009)の解説
http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2009/special/pdf/060-067.pdf

英米では1990 年代以降, WLB やファミリー・フレンドリー(以下, ファミフレ) と企業の経営パフォーマンスとの関係についての研究が積極的に行われている。その結果, 両立支援策を推進することが欠勤や離職の減少, 従業員のストレスの軽減等にプラスの効果をもたらし, それが人材の確保・定着, 社員のモチベーション, 生産性の向上につながり, 中長期的に企業の財務パフォーマンスへ寄与することが明らかにされてきた1)。日本においても, 坂爪(2002), 武石(2006), 脇坂(2006, 2007) などの実証研究により研究成果が蓄積されている。


坂爪(2002) では両立支援策は従業員の働きがいや働きやすさ, 女性の離職率にプラスの効果をもたらすことを, 武石(2006) では両立支援制度導入が従業員の確保といった採用パフォーマンスに貢献するとともに, 両立支援制度を利用できる環境を整備することが従業員に長期的なコミットメントを求める企業で女性の雇用拡大につながることを示唆している。また脇坂(2006,2007) では, 育休や短時間勤務といった制度の導入状況を示す「ファミフレ度」と女性の積極活用状況を示す「均等度」の二つの尺度で企業を分類
し, 均等とファミフレの両方の度合いが高い企業ほど経常利益が大きいことが示されている。

  • 1) 欧米における両立支援と企業パフォーマンスに関する先行研究についてはニッセイ基礎研究所(2003), 松原・脇坂(2005a, 2005b, 2006) で詳しくサーベイされている。

姉崎(2010)による報告
http://www.esri.go.jp/jp/archive/e_rnote/e_rnote010/e_rnote010.pdf

企業に積極的に取り組んでもらうためには、どうすればいいのか。そのためには、単にワーク・ライフ・バランスの重要性について説明するだけでなく、ワーク・ライフ・バランスに取り組むことは企業にとってメリットがあり、そのメリットがコストを上回るということを認識してもらう必要がある。企業の側からは、企業に対する啓発に当たっては、ワーク・ライフ・バランスの取組みと企業の業績向上との関連性を踏まえたPRが必要といった声も聞かれる。

武石(2006)の説明
http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2006/08/pdf/019-033.pdf

両立支援策の企業にとっての意義を実証的に明らかにすることは, 企業の取組を促進するという政策的な意義も大きい。本稿では, 企業経営サイドからみた両立支援策の意義に関する国の内外の先行研究をサーベイし, このテーマに接近するための研究枠組を提示する。その上で, 企業における効果の一つである従業員の確保への影響について分析し, 両立支援策の「制度導入」が採用パフォーマンスに貢献することを導いた。