コンピテンシーモデルにおける主体性

川上・齋藤(2004)は、「高業績につながる能力的特性」として働く個人が持っているコンピテンシーには、5つのレベルがあるとする。そして、レベル1〜3とレベル4、5の間には、人材のクオリティという面からも大きな隔たりがあることを示唆する(中村2003)。

レベル1(受動行動)、レベル2(通常行動)、レベル3(能動行動)は、基本的には与えられた仕事をこなすという意味で、すべて「状況に従属する」レベルの行動に属すると考えられる。それに対して、レベル4(創造行動)とレベル5(パラダイム変換行動)は、主体的に仕事に取り組む姿勢があることによってはじめて発現の可能性のでてくる行動特性であるといえる。つまり「状況に働きかけ、変革する行動」である。よって、レベル4、5の主体的な行動を醸成することが、キャリア発達、人材育成の面でも重要となってくると考えられる。


レベル4の行動では、高い成果をイメージし、それを実現するうえでの障害要因を取り除こうと、状況を変えていこうと主体的に状況に働きかけていく行動である。レベル5の場合は、さらにレベル4の行動を上回って、全く新たな、周囲にも意味のある状況を作り出す付加価値の高い行動である。レベル5の場合は、新しい仕組みづくりやビジネスモデルの創造といったことまでも可能にするという意味で、レベルが高いと考えられているのである。


つまり、コンピテンシーモデルにおけるレベルで高いレベルにあるとされるのは、自分の仕事や周りの状況に主体的にかかわり、それらに働きかけて変革し、高業績を実現することのできる力であり、それが本人のキャリア上、そしてビジネス上、重要な要素であるといえる。