年功型インセンティブ制度

年功序列の存在理由

生活費保障仮説

企業は、従業員の生活まで丸抱えで長期的に面倒を見るべきであるとい信念に基づくならば、生活費需要の少ない若年層の賃金を抑えるかわりに、生活費が必要となる結婚、出産、子供の教育の時期になるにしたがって、賃金を上昇させていくのが筋であるという考えに基づく。

人的資本仮説

人的資本理論によれば、若年時には、一般的もしくは企業特殊的人的資本への投資が伴うが、その全部もしくは一部を労働者が負担するため、生産性に応じた賃金から投資分は差し引かれる。年齢を重ねるにしたがって、投資効果が現われ、生産性そのものが上昇する(賃金の年功序列的上昇要因)、および人的資本への投資も減ってくるため、その分、賃金が年功序列的に上昇する。

インセンティブ仮説

若年時には賃金を低く抑え、その押さえられた分を、中高年時にとりかえすようなしくみ(年功序列)にすることによって、労働者が努力を低減させるインセンティブを抑える。

マッチングモデル

若年時には、本人にとってどの仕事がもっとも実力を発揮し、生産性を向上できるかわからない。したがって、平均的には若年時ほど人と仕事のマッチングが弱く、それが生産性低下要因である。またジョブローテーションなどのマッチングの試みが生産性を低める。勤続年数が増加するにしがたって、マッチングがうまくいくようになり、本人にとってもっとも適した仕事が見つかるようになり、それが生産性上昇要因となる。よって平均的にも賃金が高くなる。

労働者出資仮説

労働者は、若年時は働いて得られる賃金の一部を自動的に会社に出資(または貸付)するかたちをとり、その分を、中高年時に取り戻す方式をとることにより、会社の業績にコミットするようになる。貸付仮説の場合には、企業に預けた分だけ確実に返ってくるので、返済終了まで労働者は離職せず、解雇されないように仕事を頑張り続ける。株式出資仮説は、投資のリターンが企業業績によって左右され、企業業績が高まれば、自分が投資した分よりもリターンが多くなるため、労働者は企業業績が高まるように努力し続ける。

ねずみ講仮説

年功序列の仕組みは、若年労働者から賃金の一部を吸い取り、比較的数の少ない中高年層がその部分を頂くというねずみ講的なシステムであると解釈する。したがって、若年者は賃金を吸い取られるが、自分が年をとるにしたがって、吸い取るほうに回るため、そうなるまで企業を離職しない。しかし、社員人口が適切なピラミッド構造になっていることが存続の前提となる。