社内における利害行動

馴れ合いのインセンティブ

トーナメント型昇進などの相対報酬の場合、従業員同士が協定を結んで、勝者の報酬をみなで山分けしようとするようなインセンティブ

争いのインセンティブ

絶対報酬ではなく相対報酬を取る場合、お互いの足を引っ張り合うインセンティブが生じる(限られた資源をめぐって、お互いが争うようになる)。他の従業員と独立したかたちで絶対成果に基づいた報酬をもらう場合には、そのようなインセンティブは生じない。

馴れ合いと争いの打ち消しあいのプラス効果

もし、相対報酬における馴れ合いによるマイナス効果の兆しが組織に出てきた場合、意図的に攻撃的な人材を採用、投入することにより、競争的雰囲気を職場に紹介し、馴れ合い効果を抑制しようとするのも悪くはない。

報酬制度の工夫
  1. 賃金格差を調整する
  2. 競争のやり方をいろいろ変えてみる
  3. 攻撃的なタイプと強調的なタイプを別々のグループにまとめる
    • 協調が重要な環境では、賃金スプレッドを小さくすべきである
    • 従業員はできるだけ性格別にわけるべきである
    • 従業員同士の協調性が重要ではない場合にだけ、その人同士を直接競争させるべきである。
チーム制と競争原理の導入

チームワークが重要なチーム内に競争原理を入れると、それが非協力行動につながり、チームの生産性を低下しかねない。その場合、異なるチームに属する人材同士を競争させるスキームが効果がある。AチームとBチームがあるとすれば、お互いに職務上の相互依存のないAチームのX氏とBチームのY氏を競争させる。

チーム報酬

チームメンバー間の競争をさけ、協同を促すために、チーム単位での報酬の設定が考えられる。ただし、これにはフリーライディングの問題が生じる。

政治的行動とトップの報酬基準

トーナメント型などの相対報酬において、政治的行動を行なう従業員が多い場合、トーナメントの勝者は、より政治的手腕に優れている(他人の足をとる、非協力的行動をする)可能性が高い。


その場合、トップの近くまで昇進したものは、競争的・非協力的な人々である公算が高いので、競争・非協力インセンティブを高めるような相対基準ではなく、絶対基準による報酬がよい。また、協調を促すインセンティブも必要となる。


公平性
優秀な者の採用への抵抗

相対成果に基づく処遇を行なう場合、労働者側は、新規採用者が優秀であるならば、自分が昇進や処遇において不利に陥るので、抵抗し、自分たちよりも優秀でない人材の採用への圧力をかける可能性がある。


先任権などによって、すでに在職している人材の地位や給与を保障するような制度を入れることによって、そういった政治行動を抑制できる場合がある。

職務配置とテニュア

http://www.asahi-net.or.jp/~GA2A-MYZK/mare/mare075.html

テニュアは「能力の低下した年輩者が、有能な人材を採用すると自らの地位や
職を失うことを恐れて自分より凡庸な人材を選んで採用しようとするインセンティブを弱めるための方法の一つ」である。もちろん長期間に渡って業績を上げ続けた人材に対し、将来の業績も高い水準であるという予想のもとにテニュアを設定するのではある。


正教授の半分の給与しかもらっていないのになぜ助教授が正教授と同様に働くかと言えば、それは「将来正教授になりテニュアを得る」という昇進インセンティブが存在するからである。しかし、もし研究者が給与水準の格差に気づき、昇進を諦めたら懸命に仕事をしないということも当然起こる。それでは大学もテニュアを持つ者もレントを受け取ることができないから、それを防ぐために「アップ・オア・アウト・ルール」を設定し「昇進できなければクビ」という制度が採用されるのである。

アダムスの公平理論(衡平理論)

人は、自分のインプットとアウトプットとの比を、他社のインプットとアウトプットの比と比べる。それが等しければ公平であると感じるが、そうではないときに不公平感が起こり、その不公平感を解消するように動機付けられる。

公平理論でいうところの不公平な状態とは、自分が左辺、比較対象が右辺だとすれば、1)アウトプット/インプット>アウトプット/インプット(つまり貰い過ぎ)か、2)アウトプット/インプット<アウトプット/インプット(つまり不足)のどちらかである。

不公平な状態は、心理的に不均衡であることから不快であるため、均衡である公平の状態になるよう動機付けられる。その方法は、

  1. 自分のインプットを変化させる(貰い過ぎのときはインプットを増やし、不足のときはインプットを減らす)
  2. 自分のアウトプットを変化させるように働きかける
  3. 比較対象を変える

貰い過ぎの不公平状態の場合に、行動をどう変えるかは、支払方法が固定給か歩合給であるかで代わってくる。

  • 固定給の場合、自分の生産量に比して報酬が多すぎるということなので、比較対象の比率に合うように、生産量を増やすような方向に努力を増やすだろう。
  • 歩合給の場合、自分の生産量に比して報酬が多すぎるということであるが、生産量を増やしても、報酬も増えるので貰い過ぎ不公平感は解消されない。よって、量については変化させず、生産の質を高める方向に努力を増やすだろう。
絶対報酬での政治行動
  • 相対成果でなくても、政治行動は起こりうる。例えば自分の絶対業績を評価したり処遇を決定する上司への賄賂行為である。
  • これを防ぐためには、賃金格差を小さくすることや、上司が部下の工作活動に耳を貸さないことなどの対策が必要である。

組織内力学・組織内政治