成果主義に対する従業員の反応

特集:成果主義を検証する/働く人からみた成果主義 立道信吾 守島基博 日本労働研究雑誌 2006
http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2006/09/pdf/069-083.pdf

賃金格差についての分析結果からは以下の4点が明らかになった。?成果主義の導入は、賃金格差を大きくしている。?2000年以降に成果主義を導入した企業は、賃金格差が小さい。?働く人は、現状よりも大きな賃金格差を期待している。?しかし、実際に賃金格差が増大すると、納得感の低下につながるが、納得性確保のための施策が充実している企業では、納得感の低下が避けられる。

成果主義の浸透が職場に与える影響 守島基博 日本労働研究雑誌 1999

成果主義は、賃金制度としての導入だけでは十分でなく、それに伴う人事評価における成果・業績の重視や上司との目標設定面接実施など丁寧な人事制度の変更を伴わないと、期待された効果が得られないことを示唆している。特に職場での人材開発やチームワーク、ゆとりの確保などという現場での機能が効果的に行われるためには、全体的な人的資源管理システムの成果主義的再構成が重要である。


1) まず,成果主義的な評価と処遇に分けた場合,成果や業績にウェイトが置かれた賃金の導入は職場のモラールにマイナスのインパクトを与える可能性が見られた。
2) だが,これに対して成果や業績を重視する人事評価は,職場のモラールにプラスの影響がある可能性が見られた。
3) また,成果主義的な賃金施策の導入がもたらすマイナスのインパクトを低減するために上司との目標設定面接が効果をもつことも示唆された。
4) 過程の公平性施策は,期待されたように職場のモラールにプラスの影響を示唆する結果が得られた。

特集:成果主義賃金の現状と課題/日本の成果主義賃金の現状と課題 笹島芳雄 電機総研リポート 2006
http://www.jeiu.or.jp/navi/upimage/2008011500016_1.pdf


成果主義導入における従業員の公正感と行動変化 開本浩矢 日本労働研究雑誌 2005.
http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2005/10/pdf/064-074.pdf

成果主義の導入と従業員の公正感の関係を定量的分析によって明らかにしようとした。その結果、評価者に対する信頼、評価プロセスの明示、結果のフィードバック、評価システムの見直しといった要因によって従業員の公正感が高まること、従業員の公正感の向上は、業績向上につながる行動を促進することが明らかになった。

賃金と査定に見られる成果主義導入の効果 中嶋哲夫 松繁寿和 梅崎修 日本経済研究 2004
http://www.osipp.osaka-u.ac.jp/psa/Ashyaronbun031111.pdf

A 社では、1995 年度から5 年間、賃金決定の年功的部分を弱める一方で賃金を仕事の成果に強く連動させることで従業員間の賃金格差を広げようとした。ところが分析の結果、「成果主義」導入の「意図」とは逆に、最も大きく変わることを望んだ管理職層で賃金がより年功的になっているだけでなく、賃金格差の縮小も著しいことがわかった。分析では、その原因が査定格差の減少にあることを明らかにする。賃金の年功化により賃金格差がより強く年齢差に依存するようになる一方、査定の役割が縮小していたのである。制度変更が全く「意図せざる結果」に終わってしまった事例である。

成果主義的賃金制度と労働意欲 大竹文雄 唐渡広志 経済研究(一橋大学経済研究所編)2003
http://www2.e.u-tokyo.ac.jp/~seido/output/Horioka/horioka075.pdf

分析の結果、成果主義的な賃金制度の導入そのものは、平均としては労働意欲に影響を与えていないことが示されている。しかし、ホワイトカラーにおいては働き方を成果主義に見合った形へ変更した場合には労働意欲の向上がみられる。ホワイトカラーにおいて給与水準が同期と比べて高いと考えられている労働者は上司から情報をもらうことで労働意欲が向上しており、給与水準が低い労働者は労働組合から情報をもらうことで労働意欲を向上させている。また、賃金水準が高い労働者や賃金引き上げが行われた労働者の労働意欲は高まっている。さらに、企業が成果主義的に賃金制度を変更したことと労働者が賃金制度が成果主義的なものになったと感じることはほとんど無関係である。多くの労働者は、自分の賃金が高くなっている場合に成果主義的な賃金制度になったと感じている。

玄田・神林・篠崎(1999)は、成果主義が導入されたと答えた労働者だけのサンプルを用いて、「労働時間の長さ」や「仕事の分担の明確さ」などの労働条件の変化が労働意欲の変化にどのような影響を与えたかを計量的に分析している。その結果、「裁量範囲の増加」、「仕事の分担の明確化」、「成果の重視」、「能力開発機会の増加」などの働き方の変化を伴った場合に、成果主義のもとで労働意欲が増していることが明らかにされている。

能力主義管理の変容と批判論/形成・変容過程と批判論のサーベイ 岩田 憲治 人事労務一般 大阪大学経済学 2001

能力主義管理は高度成長期の1960年代に形成され、その後日本経済が安定成長期・バブル崩壊後の長期不況期へ推移したことに対応して、その内容を変化させてきた。経済環境の変化にともない、能力主義管理が解決すべき課題と制度が変化していることを概観する。言い換えると能力主義管理は、何を解決するために形成され、環境の変化に応じてその役割がどのように変わったか、を明らかにする。つづいて、例えば能力主義管理が働き過ぎや企業社会を競争的にしているなどの、能力主義管理に対する批判論を確認する。