http://diamond.jp/series/analysis/10021/
バブル崩壊後の1990年代、人件費削減の必要性に迫られた日本企業は、終身雇用制や年功序列制を捨て、我先にと成果主義を導入してきた。現在、大企業の8割型が何らかの形で成果主義を導入している。
「その成果主義が今やすっかり形骸化し、社員が活力を失うケースが水面下で増え続けている」と打ち明けるのは、ある労働問題の専門家だ。
「なぜ水面下か」と言えば、成果主義の運用実態が外部から見えずらいため。失敗を認めると企業イメージに傷がつくので、労働機関やマスコミのアンケートには、ほとんどの企業が「成果主義をきちんと運営している」と回答するのが常だ。このようなトレンドが最近ますます強まっているため、実態は関係者にしかわからないのである。
振り返ってみれば、成果主義の問題点が指摘され始めたのは、最近のことではない。2000年以降、巷ではすでに広く論じられて来た。
制度のメリットとデメリットを吟味しないまま、場当たり的な導入が増えた結果、現場では数々の問題が噴出。社員間で賃金・待遇格差が不自然に拡大したため、個人主義の蔓延によるいがみ合いや長時間労働が常態化したのだ。社員がすっかり疲弊してモチベーションを失い、深刻な業績不振を招いた富士通のようなケースまである。
これまでと違うのは、「成果主義を止めたくても止められないという企業が増えている」(専門家)ことだ。数年前までの学会などでは、企業関係者が混乱に直面して制度の建て直しに右往左往するケースが、しばしば報告されていた。それが、いまや「成果主義そのものをやめたい」という企業が続出する段階に移っている。
しかし、そんな状況になっても止められない理由の多くは、「導入時の経営者や人事担当役員が目を光らせており、廃止を提案しずらい」という、なんともお粗末なもの。