変容した成果主義

http://granaile.jp/column/human34.html

賃金制度改革を本質とする成果主義。日本企業の多くがこの制度を取り込み、人事管理全般に多大な影響を及ぼすまでになりましたが、それぞれどのように扱われ、運用されているのでしょうか。さまざまな企業で調査を重ねた中村先生に、成果主義の現状とこれからの人事管理について語っていただきました。

  • 成果主義といってもその形状は多様化しています。その一つが“素朴な成果主義”です。数値の実績を報酬に直結する制度で、昔の出来高給のようなものです。現在は、中小企業では分かりませんが、大企業でこの形をとっているところはほとんどありません。この制度は、賃金制度を考えなくてもいい、教育もしなくていい、人事はいらないといっているようなものです。
  • 第2のタイプは成果を生むプロセスに視点を置いた“プロセス重視型成果主義”です。あるデパートの調査で、人事の方から「売上高や利益だけに注目するのは成果主義ではなく結果主義である」との説明を受けました。組合の労使で賃金制度を変えようと協議していた時期だったので「売上高や利益率だけを賃金やボーナスに反映させるのはおかしい。結果とその結果を生み出すプロセスに着目するのが成果主義本来の姿」というわけです。これを聞いて、手堅い実務というのはこういうものでなければいけないと思いました。
  • 第3のタイプは分離型成果主義です。トヨタ自動車のように成果主義の徹底といいながら意図的に成果と評価を分離し、成果をカウントしない不思議な形です。成果をそのまま評価すると、仕事のうえでいろいろ不具合が生じる――という考え方です。成果を出すために発揮してほしい能力を特定し、その能力を発揮しているかどうかで評価します。これは成果主義ではないのですがスローガンとしては成果主義と打ち出しているわけです。世の中が成果主義にぐっと傾いたときに「導入した方がいい」と思いつつ、ぐっと踏みとどまり、模倣せずに自分の企業が納得する形にして導入する。ここがトヨタの強みだと思います。