アカデミックライティング

日本の大学におけるアカデミック・ライティング指導
佐渡島 紗織(さどしま・さおり)/早稲田大学留学センター准教授
http://www.yomiuri.co.jp/adv/wol/opinion/international_080609.htm

日本の大学では、レポートや卒業論文を書かせるにもかかわらずアカデミック・ライティングを初年度で指導しないことが一般的である。書き方は、ゼミの先輩に教わるか教授の「後ろ姿」から学ぶことが期待されている。要するに、日本の大学はエリート教育を目指すドイツの大学に習って作られた経緯があるため、論文の書き方を指導することは各研究室の仕事だと認識されてきた。

書き方の問題は、表現の問題ではあるが、むしろ学問をする姿勢の問題である。学問の世界では先人たちが築き上げた智恵を踏まえて新しい知識を構築すること、その際には互いの知的所有権を守りながら発信をしていくのだという、最も基本的かつ重要な姿勢が学生に理解されていないのである。じきに就職活動を始め、卒業論文を書く学生たちがこのような認識で大学の授業を受けているのである。こうした、学問をする姿勢を教えずに、大学で何を教えようというのかと、自分が携わってきた仕事に対して反省せずにはいられなかった。