学術論文の書き方・正攻法

学術論文の場合、個性を出すような書き方もあるが、最初のうちは正攻法としての「型」に忠実に従ったほうがよい。以下に、オーソドックスな学術論文の型を示す。

1. 問題提議

「学問」は「問い」から始まる。論文は、問いを発し、その問いに答えるかたちで展開する。記号で表すと「?」から始め、最後に「!」で終わるのがよい論文である。よって、論文の書き出しは、問題提議から始まる。トピックといってもよい。そもそもこの論文(研究)でどんな問題に取り組むのか、なぜそれが大切なのかを述べる。当たり前だが、提議する問題・トピックは、本論文の終わりで一応の結論が出るものである必要がある。余談だが、研究を開始するさい、問題設定、トピックでつまずく場合が多い(問題が大きすぎる、一般的すぎるとか)。

2. 関連する研究の現状

本論文で取り組む問題について、現在までにどのような研究がなされ、どこまで解明できてきたのかを説明する。これは同時に、現在何がわかっていないのかを明らかにすることでもある。すでに分かっていることを調べてもあまり価値を生まない。分かっていないことを追求して、価値を出すことができる。まずは、論文の序論のところで簡潔に研究の現状を書いて、その詳細を「先行文献レビュー」のところで説明するというのがよいだろう。

3. 先行研究の問題点とギャップの特定

先行研究に潜む問題点は何か。これまで研究がなされてきたにもかかわらず(あるいはまだ研究が進んでいないがゆえに)まだ分かっていない点は何か。つまり、先行研究の問題点とギャップを明らかにする。そして、この研究でそのギャップを埋めるということを明言する(そこに本研究の意義、目的、付加価値がある)。ポイントは、先行研究で埋まっていない空白を見出して、本研究でそこを埋めることにより、本研究の貢献、価値を主張するということである。とりわけ学術的貢献度が高いのが、理論への貢献である。いかにして本研究が、当該問題を理解しようとする理論枠組みを改善、改良(あるいは置換)するのかということである。

4. 理論枠組みと仮説の提示

本研究で取り組む問題への結論を出すためにどのようにアプローチするのか、理論枠組みを示す。ここはオリジナリティが試される部分でもあり、論文全体の肝の部分である。よくあるのが、複数の異なる視点や理論枠組みを組み合わせるケース、異なる分野の理論枠組みを応用するケースなど。当該問題に対する新たな視点、新たな発想を提供できるとよい。そして、理論枠組みから、具体的な仮説(予測)を導き出す。ここで重要なのは、仮説に納得感、意外性、驚きなどがあるか。あたりまえでないか。つまり、学術的に面白い仮説を導くことである。あたりまえの仮説を検証してもほとんど価値がない。

5. 仮説の検証(方法論、結果)

仮説の検証作業は、特定の分野においてほぼ標準化されているので、調査・実験デザインや分析方法などは、その分野で標準となっているルールに厳密に従うのがよい。

6. 考察と結論

今回の検証結果によって、どのような発見があったのかを簡潔に説明し、それがどれほど本研究の目的を満たしたのか、どれほど当該分野の進展に貢献するのかについて論じる。本研究の限界と将来に向けた方向性についても議論する。最後に結論を述べる。