展望主体の研究論文執筆のポイント

LePine & King (2010)は、展望主体の研究論文において、理論面で貢献するための条件について議論している。


例えば、Academy of Management Review (AMR)では、まったくの新しい理論論文のほかに、次の3つのケールの論文を掲載している。(1)既存の理論に疑問を唱えたり、論点を明かにする論文、(2)新しい理論的な問題を特定・描画し、新しい理論構築への道を導く論文、および(3)最近の研究の発展を統合して新しい理論を築く論文である。


(1)については、既存の理論に関する諸文献での矛盾点を指摘したり、その理論が当てはまらないようなケースを提示したりする。(2)については、既存の理論が、新しい問題にアプローチするのに適していないことを示し、新たな理論構築の必要性を唱えたりする。(3)については、複数の理論を統合することによって、これまでになかった理論枠組みを作り出したりする。


展望主体の理論的に優れた論文を書くためには、以下のようなポイントが大切である。


まず、論文において冒頭で投げかける「疑問や課題」が、研究対象の理論面での理解につながっていることが必要である。つまり、はじめの問題設定自体が理論志向でなければならない。例えば、問題となる現象理解にとって、既存の理論が大きな限界点や問題点を抱えていることを指摘する(よって新しい理論が必要になると説く)。


そして、問題とする研究対象の理解を妨げているのは、既存理論の欠陥であることを明らかにすべきである。だからこそ、新たな理論あるいは修正された理論が必要になる。優れた論文は、面白くかつ重要な理論パズルを新しい理論枠組みで説くことである。研究方法を改善すれば理解が深まるような問題を対象とすべきではない。


さらに、理論や研究の統合は、単に既存研究で用いられた多くの変数を再整理して直感的に配列したような枠組みのレベルを超えたものでないといけない。特定のコンセプトの関係が洗練されないといけないし、理論面から立ち上がったものであり、理論の内部構造は厳密でないといけない。また、単に既存の知識を集合させたもの以上の洞察を与えるものでないといけない。


つまり重要なのは、対象となる現象理解にとって、既存の理論が適切でないことを明確に指摘し、新たな視点や異なる理論枠組みの統合によって既存理論の弱点を乗り越え、研究面や実践面において新たな洞察を与えるような「理論的貢献」を行うということだ。

文献

LePine & King (2010) Editor's comments: Developing novel theoretical insight from reviews of existing theory and research. Academy of Management Review.