変化を作りだせる企業

古森(2013)は、激しく変化する今日の時代において、変化にいかに対応し、舵取りをしていくかが21世紀における経営の最大の課題だという。そして、このような時代に勝ち続ける企業は、変化にすばやく、うまく対応できる企業であり、そこからさらに進んで、変化を先読みし、先取りできる企業でなければいけないという。しかし、それでもベストではなく、自分で変化を作り出せる企業になることがベストだという。新しい仕組み、新しい製品、新しいアイディアを提供し、新しい価値を生み出し、世の中を変えていく。しかも、そうした商品を、絶えず生み出していく企業を目指さなければならないというわけである。


古森によれば、企業経営とは「社会的に価値のある商品やサービスを影響することにより、売上を上げて収益を獲得し、それを未来に向けて投資しながら、組織を存続させていく」ことであり、特に有事の時に経営者がやらなければならないことは、次の4つに集約される。


第1は「読み」で、自分たちの置かれている状況を「読み」、今後どうなるかという将来について「読む」。第2は「構想する」ことで、将来を読んだうえで「どこに向かうか」「何をすべきか」を考え、具体的な作成やプランに落とし込む。第3は「伝える」である。会社の危機に立ち向かう起点が経営者の強い意志であり、その意志を組織のすみずみにまで伝播させ、危機感を共有し、社員1人ひとりに強い自覚を持たせる。そして第4が「実行する」であり、決断したことをやり遂げる。


では、「今後どうなるのか」「何が起きようとしているのか」という流れを読み、未来を予測するうえで重要なことは何か。古森によれば、常日頃から「読み」の精度を高める努力をしていると、「ものの理(ことわり)」というか、法則性のようなものが自分の中で理解できてくるという。「Aが起これば、Bも起こる」「CをやらなければDという問題が起きる」という因果関係が見えてくるというのである。自分の中にこの手の法則性を畜背しておけば、時代や状況、プレイヤーが変わっても、ちょっとした兆候からでも、次の展開を、早く、確実に予測することができるという。つまり、世の中には普遍的な法則性、因果関係があり、これらを自分の中に蓄積させていくことが重要だというわけである。


ただ、現状把握や未来の予測で間違えるケースがあり、それは大きく3つあると古森は言う。1つは、現実を直視しないケースである。正確に「読む」には、物事を冷徹にみることが必要で、事実は事実として向き合い、目をそらしてはいけないという。2つ目は、情報が偏っているケースである。情報はできるだけ、多面的に仕入れなければならないという。3つ目は、思い込みや偏見などの先入観がある場合である。先入観や思惑があると、客観的に物事を見ることができなくなるというのである。