将来を洞察する方法

矢部(2007)は、目の前に生起する現実の中には、目をこらさないと見逃してしまう小さなシグナルが埋め込まれており、それを読むことが将来を洞察するのに決定的に重要だと説く。シグナルを感受するには研ぎ澄まされた五感(小さな感覚)が必要だというのである。それはどうすれば磨かれるのだろうか。


自然体験は、その人の人生観や職業間に深い影響を与えるに違いないという。自然に接すれば、自分がいかに小さな存在であるかが実感できるようになる。自分を超える大いなる存在に対して謙虚になり、自己中心的な考えを反省し、小さな感覚、こまやかな感覚も生まれる。そして、思考はゆったりとしたものになるという。


シグナルに気付くには、「アレ?」「ナニ?」とか引っかかりを感じたとき、見逃さないようにするのが大切だという。物事は突然起こるように見えるが、因果は連続して起きている。


全体を見渡す目も大切である。高所に立って「風景」を見ることは、全体を見渡すだけでなく、自己を客観視するためにも大切だという。俯瞰とは、高所から自分を含む全体を見通すことである。自分を全体の状況の中で位置付ける。このようにして、既成の価値観や利害にまみれた自己の視点を再検討することができるという。


そして、大所高所の視点から見るだけでなく、ミクロも見るバランスが必要だと説く。ミクロとマクロの間を、ズームつきカメラのように焦点を合わせて行き来できれば、現実をより正確に把握できるだろうという。