トップジャーナルに論文を掲載するための心得

トップマネジメントに論文を掲載することを目的として研究を行うのは本来の正しい研究姿勢とはいえないかもしれない。ただし、トップジャーナルに掲載される論文の多くが優れた研究であることを考えれば、一つの指針として有効だと思われる。


問題は、そのためにはどうすればよいかということなのだが、最初の心得として挙げられるのが研究におけるテーマやリサーチクエスチョンの重要性である。既存の理論や研究成果に少しだけ付加価値をつけて漸進させるような研究は、それ自体価値があるものの、トップジャーナルに掲載される論文にはなりにくい。重要なのは、やろうとしている研究テーマやクエスチョンが、既存の研究分野にどれだけ大きなインパクトを与えうるかということである。具体的には、それまで暗黙的な前提となっていた考え方を覆すような研究である。あるいは、いままで注目されてこなかったが実は非常に重要な内容に切り込んでいくような研究である。既存の研究内容に異なる切り口からアプローチし、新しい発見を得るような研究も有効であろう。そのような斬新な切り口や革新的なテーマは、先行文献ではなく、日常の世界における観察や実践家との対話などで浮かび上がってくることが多い。


論文の書き方もことのほか重要である。勝負は、タイトル、要約、イントロダクションで、以下に読者や査読者を味方につけることができるかどうかである。「素晴らしいショーの始まり」として最初の最初で読者を惹きつけるためのすばらしいストーリーを語れるかである。なぜこの論文のトピックが大事なのか、どんな目的でこの研究がなされたのか、なぜそれが面白いのか、よって読むに値するのか、どんなかたちで既存の分野に貢献していくのかを説得力あるかたちで語ることである。論文執筆は、アートでもありサイエンスでもある。サイエンスという意味は、論文の構造やパーツごとのクオリティの評価基準などが比較的定まっているということである。しかし、論文全体を通じて魅力的なストーリーを語り、読者を説得し、具体例などをとりまぜながらビビッドに記述し、豊かなかたちで概念化を行い、論文全体をクラフトしていく技はアートであるといってもよい。そういう意味では、論文の著者は読者をわくわくさせ、最後まで飽きさせないエンターテイナーでなくてはならない。


上記のような要素が本当なのかどうかを実感し、そこから学んでいくためには、実際にトップジャーナルに掲載された論文、その中でもベストペーパー賞の受賞作などとりわけ評価の高い論文を読み込んでみるのがよいであろう。