流れと付き合うコツ

堀(2009)は、緊張と弛緩を使いこなして試合の流れと付き合うコツを以下のように説明している。

野球の選手を例にとって考えてみよう。・・・とにかく初回だけは神経を集中させて全力投球するというのが定石としてある。・・・初回にいきなりノーアウト走者一塁というチャンスの芽をこちらから与えてしまうと、相手は「敵は大したことはない。今日はやれるぞ」という気になり、勢いがついてしまうことになる。・・・その集中力は、初回に無事相手を無得点で終わらせるまでは持続しなければならない。だが、その後はしばらく適当に流すようにする。・・・いつまたゲームの行方を左右する綾の場面がやってくるかわからないが、その時までは力を温存して全力は出さない。
やがて勝敗の行方を決定付ける最大の山場が必ず来る。・・・山場には、また集中力を発揮して後先構わず持てる力をフル回転させよう。・・・このように、ここ一番という場面では集中力を発揮させなければならないが、それを必要とする場面は一試合の中にそう多くは出てこない。
ものを考えたり仕事をする時も同じで、その流れの綾を的確につかみ、いくつかのポイントに絞って集中力を高めればたいていはうまくいくものだ(堀 2009:124-126)。

また、「たおやかさ」を身につけることによって時代の流れとうまく付き合う方法についても以下のように解説している。

私が若いサラリーマン諸君に生きる姿勢の基本として常に心がけてもらいたいのは、「たおやかさを持つ」ということである。柔軟にいかようにも自分を変えていこうという姿勢でいるということだ。・・・たおやかさを持ち続けるためには、まず第一に「万物は流転していく」ということを認識しておかなくてはならない。・・・第二に、したがって常に「変身願望」を持って毎日を生きることが必要となってくる。「変わりたい」という気持ちと「変われる」という信念を持つ。・・・自分だけを変えようとしても、なかなかうまくいくものではない。「万物の流転」という真理に合わせて自分を変えていくことも必要だが、同時に自分を変えていくために、仕事なりの周囲の状況を自ら積極的に変えていくという姿勢が大切なのである(堀 2009:278-279)。