自然をイメージする

自然、大自然というものは、実にすがすがしく、ゆったりとおおらかな心にしてくれる。都会に住んでいる人であっても、旅行などでこういった自然に触れた体験は必ずといっていいほどあるだろう。むしろ、都会に住んでいるからこそ、自然のすばらしさに魅了されるといえるのかもしれない。自然の素晴らしさを肌で知っているからこそ、ただ自然をイメージするだけで、いま自分がそこにいるような雄大な気分に浸れるものである。今まで訪れた場所で自然の素晴らしさに感動した場面を思い出と一緒に追体験してみるのもよいだろう。そのときの感覚が懐かしさとともに戻ってくる。そして、またあの場所に行ってみたいとさえ思うだろう。


静かな夜に美しい満月を眺めていると、遠い昔の古代の人々も、いま私がこうして見ている満月とまったく同じものを眺めていたのだということに気がついて感慨深い。満月は人間がこの世に誕生するずっと前から同じように夜空に出て、同じような姿をして変わらないのである。このように考えると、宇宙の時間がいかに壮大で、めまぐるしく移り変わる人間の歴史や自分の一生など宇宙時間から見ると瞬きするほどの時間でしかないことが実感できるであろう。夜に浮かぶ美しい月の姿は古代も今もまったく変わっていない。そして将来にわたっても永遠にそうあり続けるのではないかとさえ思える。


このようなことを考えると、毎日を忙しく働き、心の余裕がない人々にとって、仕事やなんらかの場面で、意図的に自然をイメージすることの効果が期待できる。大自然の姿、山や川、海、青い空にさわやかな風、小川のせせらぎや虫の声、さんさんと降り注ぐ太陽、静かな夜にやさしく見つめる月、場合によっては時折顔を見せる厳しい自然。積乱雲、雷雨、洪水、地震。こういった自然をイメージすることによって、例えば自分がいま頭を悩ませている問題がちっぽけなものに思えてきたりして、狭い視野に閉じ込められている自分を解放することができるかもしれない。大自然の中に身をおく自分をイメージすることによって、自然と一体化している気分になってみる。そうすることによって、自分を運んでくれる世界の大きな流れを感じることができるかもしれない。一寸の時間でも瞑想して自然をイメージしてみることによって、もともと動物としてもっている本能の優れた点を呼び覚ましてくれるかもしれないのである。