ベムの自己知覚理論

われわれは、自分が思うほど自分のことをよく分かっていない。つまり、わたしたちの頭は、自分自身がやっていることを全部理解できるほど賢くないのだ。例えばわれわれは自分自身の感情や態度はよくわかっていると思い込んでいるが実はそうではない。それを示しているのが自己知覚理論である。


自己知覚理論のポイントは「自己知覚が他者知覚と同様のプロセスを持っているという点」すなわち「自分自身の感情や態度を理解する方法は、他者の行動などから他者の感情や態度を推論する方法と似ている」ということである。


つまり、自分自身の感情や態度でさえ、自分がとったなんらかの行動などから、推論して「自分はこんな感情や態度であるはずだ」というように理解するのである。なんらかの感情や態度が内からわきあがってくるから、それが行動を決めるのだというのが自然な考え方なのだが、実はわれわれは、(原因はよくわからないが)実際に行った行動から、その行動はしかじかの感情や態度を持っているがゆえにそうしたのだと逆方向に理由づけしている。


つまり「他者の気持ちや態度」を外的手がかりから推測するのとほぼ同様の推論過程を経て、「自分の気持ちや態度」を自己知覚しているということになる。なぜそのように外的な手がかりから自分自身のことを知ろうとするのかというと、実際は、態度が行動を決めるのではなく、かなりの行動が無意識的であったり習慣によるものであったり、あるいは外的な制約や統制によってもたらされるからであろう。

宿題や試験が厳しく、たくさんの勉強時間を割かなければならない科目があるとする。もしかしたら、本人にとってはつまらない科目かもしれない。しかし、自分が一生懸命勉強している姿を自分自身で知覚して、自分はこの科目が好きでしょうがないのだ、と逆に自分の気持ちを推論することになることが考えられる。

参考サイト

べムの自己知覚理論と認知的不協和理論
http://www5f.biglobe.ne.jp/~mind/knowledge/basic/social001.html