時代の変化を読み取る2

「お前は5年後の世の中がわかるか」
「わかりません」
「お前は愚か者だ。五年後の世の中もわからないようで、経営コンサルタントが務まると思うのか」
・・・「それではあなたにはわかりますか」
「もちろんわかる。よく考えてみたまえ。いったい、いま起きていることで5年前には影も形もなかったことが何かあるかね」
なるほど言われてみれば、いま起きていることのほとんどは、すでに5年前に影や形、少なくとも萌芽はあったはずである。ということは、5年後に起きることの萌芽は、いまわれわれの目の前に姿を現しているのである。そこで問題はまず、この双葉はやがて栴檀になり、あの双葉は樫の木になり、こちらの双葉は名もない雑草になるということ、あるいは、この双葉は樫の木にはなるもののひ弱だからいずれ枯れてしまう、そういうことを見抜き、判断する鑑識眼を身につけられるかどうかということであろう。こうした鑑識眼があれば、いまさまざまな芽が吹いている、その中から重要なものを選びとって、5年後を予測できるはずである。

堀紘一(1996)「成功する頭の使い方」PHP研究所