経営組織論(1部)

採用基準の設定

ケース1

A社は、近年の経済不況の影響で、業績不振に悩むようになった。とりわけ、人件費の負担が企業業績に重くのしかかるようになった。そのため、A社は、同社サービス部門のお客様相談センターの従業員100人を、それまでは正社員を使って運営していたが、高校生を主体とする安価なアルバイトに代替することに決めた。

ケース2

従来のお客様相談センター勤務の従業員は、平均年齢30歳で、給与・賞与・福利厚生などの人件費を時給に換算すると4000円くらいである。それに対し、労働力をすべて高校生のアルバイトで対対すると、時給に換算して700円である。よって、1時間当たりで考えて、3300円×100人=33万円の人件費圧縮になる。お客様相談センターを1日8時間操業するならば、1日あたり33万円×8時間264万円の節約になる。年間240日営業するとするならば、約6億3000万円の人件費圧縮になる。

質問
  • 人件費は安ければ安いほどよいのか
  • 優秀な人材を高い給料で雇うのと、優秀でない人材を安い給料で雇うのとどちらがよいのか
  • 高卒と大卒の社員のどちらを雇うべきか
もっとわかりやすい例

自動車工場の従業員を、時給の高い熟練工から、安価であるが低能力の工員に代替することは得策か。

    • ヒント:人件費総額ではなく、自動車生産1台あたりの人件費比率を考える
    • 時給1000円で10台/時間つくれる熟練工と、時給500円で2台/時間しかつくれない未熟練工を比較すると、総額人件費は前者のほうが高い。
原則
  • 生産1単位あたりのコストが低いほうを雇うべき(W/Q)
  • つまり、生産(もしくは売り上げ)に比べ、給与比率の低いタイプの人材を雇うべき(費用対効果の高い人材を雇うべき)
  • 人件費総額にとらわれると経営判断を間違える
    • 上記の原則は、企業の財務状況とは関係が無い。企業の財務状況が悪いから人件費を削減するというのは短絡的かつ誤った思考
    • 低賃金労働力は、低コストの労働力とは違う(安易に生産拠点などを海外に移転することは危険)
解説

このシナリオで注意しなければならないポイントは大きく2つ。ひとつめは、人件費のみにとらわれてはいけないということ。給料の安い労働力を使うと人件費が節約できるから利益があがると短絡的に考えるのは間違い。人件費(給料)が高くても割安な労働力を選ぶべきなのである。もう1つは、現在の財政状況を意思決定に加味することが間違いを犯す原因となることである。現在の財政状況(過去の結果)は、どのような人材を採用すべきか(これからの費用対効果)とは独立した問題なのである。

異なるシナリオと採用基準
  1. 生産が労働者間で独立な場合
  2. 労働者の生産性が他の労働者の生産性に影響する場合
  3. 生産は労働者間では独立していても労働者が資本と重要な相互関係を持つ場合