計画的偶発性を生み出すキャリアの布石行動

Hosomi et al (2014)の研究では、学生時代に行う「探索的な行動」が、起業に関する疑似体験や起業家との出会いなどを通して、起業したい、起業しようという意図を生み出すことを理論的かつ実証的に検討している。その下敷きとなっている理論が、「計画的偶発性理論」である。

計画的に偶発性を生み出すという行動はなんとなく分かるが具体例がイメージしにくいと考える人もいるだろう。これに関しては、全く同じ行動ではないかもしれないが「布石行動」というような考え方もある。高橋俊介氏は、「自己理解を深め、“布石”を打って、よりよい偶然を引き寄せる」において以下のようなコメントをしている。

自己理解を深め、短期的な都合ではない、自分の根底にある「大切にしたいもの」を認識しましょう。また、なんとなく惹かれるもの、興味のあるものを大切にするのもよいでしょう。そうしたところから、「出世には関係ないけれど、あの人と話してみよう」「なんとなく面白そうだから、あの勉強をしてみよう」など、仕事やキャリアアップに直接関係ない人脈に投資したり、学んだりするのです。こうしたことを、私は「布石を打つ」と表現しています。

 

これらの行動は、「将来こうなりたいからこの人とつながっておこう、この勉強をしよう」と、予想して行っているわけではありません。しかし、普段からこうして布石を打っていると、その中のいくつかが意外な形で活き、チャンスが巡ってくるのです。

学生で、まだ「自分が将来どんな仕事をしたいのか分からない」人や、社会人であっても「今の仕事をこのまま続けて行って良いのか分からない、今の仕事が本当に自分のやりたいことなのか分からない」といったことを考えている人は、「布石行動」を意識するのが良いかもしれない。 

文献

Hosomi, M., et al. (2024). Planned Happenstance and Entrepreneurship Development: The Case of Japanese Undergraduate Students. Administrative Sciences, 14(2), 27.

 

参考サイト

キャリアは最大約8割が「偶然」でできている?! 「幸せなキャリア」を引き寄せるために大切なこと【インタビュー 高橋俊介氏】 | キャリアは道なり | mi-mollet(ミモレ) | 明日の私へ、小さな一歩!(2/2)