経営学を学んだ後どう実践に使うのか

根来(2014)は、経営学を学ぶことは将棋や囲碁の定跡・定石を学ぶことに似ているという。定石を知れば、知らない人よりは強くなれるが、定石通りに手を打つだけでは必ず上達の限界に突き当たる。本当に強い将棋指しや囲碁の名人は、定石を超えて手を打つ。しかもビジネスの場合はルールが固定されていないから、ルールを変えることができる競争でもあるという。


そこで根来は、経営学(競争戦略やビジネスモデルなど)の理論や手法を学んだ人は、それらをクリエイティブに使いこなせるようになることが重要だと指摘する。経営学を武器にするために、具体的状況に即して「考える力」を高めることが欠かせないというのである。理論や手法を「適用する」のではなく、理論や手法を参考に、自分の頭で考える必要がある。


根来によれば、そもそも経営学は答えを求める人に答えそのものを与えてくれる学問ではない。着想を与えてくれる学問なのである。ある物の見方、ある整理の仕方、ある一般性のある構造に関する知識などを与える学問だというわけである。自分でどうしたらいいかといことは、自分で決めていくしかない。ただし、考える手がかりとして、経営学の理論や手法は一定のヒントを与えてくれる。経営学とはそういう種類の学問だと根来はいうのである。


具体的な状況の中で、状況に翻弄されながら必死で考えて引き出すのが「答え」であり、経営学は「答え」を示さないが、「ヒント」は示すという。また、根来は、経営学の理論や手法を活かすために大事なのは、それを使おうとする人の「考え方」だという。たとえば、どういうロジックを組み立てて、ビジネスモデルに組み込んでいくか。そのロジックは適切か。それが重要なのである。また、一緒に働く人の納得感を高め、現実のオペレーションの競争力を高めるという意味で「アクショナブル」なロジックが重要なのである。