優れた査読を行うための心得

査読雑誌で、匿名審査員が投稿された論文を査読する目的の一つは、当該学術雑誌に掲載される論文のクオリティを最大限に高めるためである。そのため、査読のクオリティも、当該学術雑誌ひいてはその分野の学問の発展のためには欠かせない。


Caligiuri & Thomas (2013)は、Journal of International Business Studiesの巻頭言で、質の高い優れた査読を行うための心得について解説している。彼らによれば、優れた査読を行うためにおさえるべき最初のポイントは、その論文の「当該学問分野へのインパクトや貢献、有意義性」の評価を中心に行うことである。これは、研究および論文のクオリティを高めるうえで、最も重要なことである。関連すれば、当該雑誌の編集方針(重視している分野、具体的な貢献の方法など)との親和性も重要である。次のポイントは、「その論文の長所と短所」について、詳しく指摘することである。その論文の長所を生かすように改訂していけば、より優れた論文になる。そして、その論文の短所をカバーしていくことによっても、その論文は優れたものになるからである。その次のポイントは「論文に内在する問題を解決するための具体的、建設的な助言、提案」を行うことである。また、建設的とも関連するが、全体的にポジティブなトーンにするほうがよい。


その他、編集者や著者がその査読を活用しやすいような書き方が求められる。具体的には、コメントに番号を振る、論文の構造や見出しに即した順番でコメントする、重要かつ主要なコメントの部分と、マイナーなコメントの部分にブロックを分ける。査読で触れた文献については引用文献リストを付ける、編集者が行う意思決定に関連することは(掲載可にすべき、掲載不可にすべき等)書かない、そして、査読を引き受けるときは自分の能力を客観的に認識して引き受けるか受けないかを決めるべきであるという。

文献

Caligiuri, P., & Thomas, D. C. (2013). From the Editors: How to write a high-quality review. Journal of International Business Studies, 44(6), 547-553.