チャンスや運をつかむ方法

シーリグ(2010)は、スタンフォード大学起業家精神を教える立場から、チャンスや運をつかむにはどう行動すればよいかを具体的な事例とともに紹介している。まず彼女が強調するのは、身の回りにチャンスは無限にあるということである。周りを見渡せば、解決すべき問題が山ほどある。問題はチャンスなのである。問題が大きければ大きいほど、チャンスも大きい。そして、問題の大きさに関係なく、いまある資源を使って、それを解決する独創的な方法はつねに存在するということである。起業家とは、チャンスになりそうな問題をたえず探していて、限られた資源を有効に使う独創的な方法を見出し、問題を解決し、目標を達成する人をいうのだとシーリグは論じる。


多くの人がチャンスに気付かないのは、問題にぶつかっても、解決できるはずがないと決めてかかってしまうから、問題を狭く捉えすぎるがゆえに、独創的な発想ができないからである。だから、チャンスをものにするためには、目を凝らして、身の回りにある問題(=チャンス)を見つけ、そのチャンスを徹底的に活かせばよいということになる。そうするための方法の1つは、日々、自分自身に課題を出すことである。常に課題を設定し、それを工夫して解決する。問題は数をこなすほど、自信をもって解決できるようになる。問題はすべてチャンスである。問題は必ず解決できるという気概を持つ。そして問題に真正面からぶつかり、常識をひっくり返す。


幸運は自分で呼び込むものであるという視点に関連し、シーリグは、リチャードワイズマンの研究をひきながら「運のいい人たち」は、一般の人よりも幸運を呼び込みやすい共通の資質があることを示している。まず、目の前に転がってきたチャンスを活かす。周囲に起こることにたえず注意を払うことで、そのときどきの状況を最大限に活かせる。また、運のいい人は、未知のチャンスを歓迎し、経験のないことにも積極的に挑戦する。よく知らないジャンルの本を積極的に読み、あまり知られていない場所を旅し、自分とは違うタイプの人たちとつきあおうとする。運のいい人はどちらかというと外向的である。いい人との出会いがあり、出会いの輪も広がり、さらにチャンスの扉が開かれる。そして運のいい人は楽天的で、自分にはいいことが起こると思っている。物事がうまくいかなくても最悪な状況から前向きな成果を引き出すので、予言の自己成就につながる。一般的には苦境とみられる状況もプラスの経験に変えられるのである。


さらに、運のよい人は、自分の知識と経験を活用し、組み合わせるユニークな方法を見つけている。自分の知識や人脈の価値をよく知っていて、必要なときにそれを駆使するのだという。経験がいつ役立つかわからない。目先の利益にとらわれず、幅広い経験を積み、知識の幅が広がれば広がるほど、自分の引き出しは増えるのである。


シーリグが要約するには、目標を絞り、ひたむきに努力すれば、幸運が舞い込む確率は上げられる。けれども努力以外にも使えるツールはたくさんある。訪れた機会を歓迎する、チャンスが舞い込んだら最大限に活かす、身の回りの出来事に目を凝らす、できるだけ多くの人たちとつきあう、そして、そのつきあいをできるだけいい方向で活かす。悪い状況を好転させ、いい状況はさらに良くする。そのためにはできるだけ幅広い経験をし、その経験を独自の方法で結びつけること、そして、恐れることなく、自分の人生を演じたいステージにあがろうとすることなのだと言う。