流れ力

手束(2008)は、高校野球の取材を通じて「流れに乗る」ことはどういうことかを論じている。

流れ力とは

高校野球で「佐賀北」のような高校が、力の勝る高校に勝ち続け「予想外の」優勝をすることができたのは、試合ごとの「流れ」、大会を通じての大きな「流れ」、佐賀県勢としての歴史的な「流れ」に乗ることができたのではないか(p3)。いい流れに乗っているとは、好結果の連鎖があるとき(p37)。物事が自分の思うように進んでいくとき(p95)。その流れによって生まれる力を流れ力という(p46)。つまり、技術力ではない「プラスアルファ」を生み出す力のことを流れ力と定義している。

流れ力が生まれる瞬間

勝ったという事実が大きな自信と価値を生み、それによって次も勝ち、自信も倍増していく。それがさらに大きな価値観となって返ってくる(p40)。さらに、観客が応援したい野球をし、五万の観衆も味方に引き入れてしまう(p46)。

流れを引き寄せるには

立ち上がりが攻めやすい。試合では立ち上がりのリズム作りが難しいが、立ち上がりに、相手がリズムに乗る前に(リズムに乗せないで)、自分のペース(リズム)に乗ることができれば、流れをこちらに呼び込むことができる(p61)。立ち上がりは少し肩を抜いて、10のうち8の力を思い切りよく発揮するゆとりを持つ。また、流れの3要素として「天の時(長期)」「地の利(中期)」「人の和(短期)」の流れの好機を見極める。いい流れであれば、基本的に乗っていく。悪い流れであれば、多少のアクションを起こす。別の動きをして異なった流れを呼び起こす(p84)。当たりそこないのボテボテの打球がヒットになったりするなどのツキや運は、流れを呼び込めている証拠であり、単なるラッキーではなく、実はそこに至るまでの準備があってこそなのだ(p203)。流れを引き寄せる準備と努力を怠らない者に結果的に運やツキが味方するのだ。

どうやって流れを読むのか

「流れ」が来る前には必ず予兆がある(p50)。その後に起こることが何かの出来事に凝縮されていたりする。野球でいえば3の倍数で節目が来る(p75)。節目で仕切り直しをしたり、攻撃の仕方を変えてみたり、なんらかのアクションを起こして次の展開を作っていく。また、当事者として全体が見えなくなっている場合には、自分の立ち位置を少し変えるだけで全体が見えてくる(p77)。観察力と分析力が重要。情報収集などで手に入れた「点」と「点」を巧みに結んでいき、線を作る(p194)。流れを読むとは、早い状況判断で、次の一手、次の対策を練り、具体的に動くということなのだ(p84)。読み違えたり読みきれないときに、素早い処置をしてまた次の流れを作っていく努力をすることが必要(p85)。

悪い流れになってしまったら

まずは普通の流れに戻す。いつものようにする、元通りにするという考えから始める(p97)。節目などに原点回帰し、自分を見つめ直す(p182)。何か新しいことをすることで流れを取り戻す。ただし、悪あがきをしたりして「根本」を変えてはいけない(p98)。メリハリをつけ、節目をうまく使う(時間の使い方、言葉の使い方。例えばタイムアウトで流れを変えるアクションを起こすための効果的な指示をする)。逆転できるタイミングがくるまでじっと我慢する。苦しいときこそ次への準備段階である。あきらめないで最後まで逆転可能な距離まではくっついていき、逆転劇に導くための布石を打っていく(p189)。