直観とは何か

畑村(2005)は、直観とは何かを理解するのに有効な考え方を示してくれる。畑村によれば、直観とは、一言でいえば「ショートカット思考」「飛躍思考」である。では、ショートカット思考とか飛躍思考とは何か。


物事を論理的に理解するのを、1つ1つの論理のつながりを丁寧に吟味することによって最後までたどりつき、理解に至るということから、逐次的思考と呼ぶならば、ショートカット思考とか飛躍思考というのは、途中のプロセスをすっ飛ばして、最後までいってしまう思考である。だから、逐次的思考に比べて圧倒的に素早いスピードで理解や結論に至る。


ではなぜ、途中の論理を飛ばして結論に至ることができるのか。それは、過去に徹底的にそのことについて考え、演習をして答え合わせまで行なう経験をしているからである。この経験の蓄積があるからこそ、Aをみて瞬間的にZがわかるのである。将棋のプロ棋士が、一目で可能性のある指しての90%以上を捨ててしまって、直観で見出した筋を中心に読むというのも同じ理屈で、過去にものすごい量の対局や練習といった経験があるからこそ瞬時にそういったことができるわけである。


直観的理解は、対象となる物事の構造や論理といった内面を深く理解しているからこそできるのであって、これは表層面のみの経験の積み重ねといった経験主義や、単なる直感(最初に感じること、勘)とは違うのである。