素材の長所を最大限に引き出す

論文であっても表現力が必要だし、論文を書くことは料理をすることと似ていることを以前に書いた。研究成果すなわちまだ論文になっていないデータなどの素材については、長所も短所もある。とりわけ、実証研究はいちど計画を作り実行してしまうと後戻りできないから、データ収集後に方法論上の短所、結果の短所が明らかになることもよくある。しかし同時に、その素材については、論文として書く理由でもある長所があるのである。


素材の長所を最大限に引き立てつつ、短所をできるだけ目立たないようにするというのが、優れた論文を書いたり優れた料理をしたりするポイントである。つまり、研究成果のもつ良さが最大限に引き出されるようなストーリーを仕立てて、そのストーリーを支える研究結果をもっとも効果的なかたちでプレゼン(表示・表現)する。もちろん、短所があるということも忘れずに述べるわけであるが、あまりに長所がひきたつながら、短所は論文のオマケ程度にしか見られなくなる。つまり、優れた論文に仕上げることができれば、研究方法や結果に関する短所を差し引いたとしても、十分に貢献度の高い研究成果であると判断されるのである。