運命の流れに身をまかせる

自然とは「他者の助けを借りないで、それ自身の内にある働きによって、そうなっていること」である(森三樹1969)。自然も必然も、他者の介入をゆるさず、それ自身に内在する法則にしたがって展開するという意味である。運命とは必然の勢いであることを考えると、無為自然ということは、「人為を捨てて必然の流れのままに従う」「人力のはからいをすてて、ひたすら運命の流れのままに身をゆだねる」ということになる。運命論(運命自然)といっても、自分自身のこれからのゆくさきが何か他の力でコントロールされているというわけではないのである。自分自身に内在する力、勢いにしたがって、あるがままでいることだといえよう。

人力ではどうすることもできないと悟ったとき、運命のままに従うことこそ、至上の徳であるといえよう(人間世篇)。

すべてを物事のなりゆきのままにまかせ、心をゆうゆうと自由の境地に遊ばせて、やむにやまれぬ必然のままに身をゆだね、心の中におのずからな中正の状態を養うがよい。しいて、よい結果を求めようとするな。ただ天命のままに従え(人間世篇)