易経の本質

易経の発展

易経に示される吉凶は、変えることのできない宿命として与えられるのではなく、従うべき法則を示すことによって、運命開拓の努力を促すものであり、人間の能動性が強く要求される。易占いでは、亀卜(きぼく)や箸筮(しぜい)が使われたが、とりわけ箸筮は、数理を基礎とし、理知的、論理的なものに発展する傾向を備えていた。農耕技術などの進歩によって、人間はもはや自然の暴威の前にひれふすだけの存在ではなくなったことにより、自然の中に一定の法則があることを知り、その法則に順応することによって運命を開拓できるという自信を高めた。これにより、自然哲学と実践道徳を含む易独特の性格を形作る契機となったと考えられる。

人間の主体性を確立するための易経思想

易経思想は、有為転変する世相に直面し、変化の実相をつかもうとして形成されたものである。転変する時流に対して、人間の主体性を確立するためには、生起し消滅する現象を貫いている不変の法則をつかみだし、それによって逆に現象を支配する必要がある。その原理をつかみ出すために、複雑に変化する世界を、ひとたび極限まで単純化し、そこから世界を再構成していった。それが、絶え間なく変化する森羅万象の世界における一定不変の法則としての、陰と陽の対立・転化なのである。


陰陽二元論は、あらゆる事物は孤立して存在せず、必ず対になるものがあり、それと対立することによって統一した世界を作ると説く。すべての変化は、陰陽の対立から生まれる。この両者は固定的・絶対的なものではなく、常に相互に転化する。究極に達すれば、陰は陽に変じ、陽は陰に変ず。極まれば必ず反する。変化は循環だけでなく、相互に作用することによって新しいものを生み、発展させる。宇宙万物はこの法則のもとに不断に変化し発展する。


この変化の法則は、人間も支配するが、人間はそれに対してただ受動的であるのではない。人間は、その法則をわがものとすることによって、たえざる変化の中にあって、自らの運命を切り開いていくことができる。変化の本質を見極め、それに沿って行動するのである。