学術論文と料理

同じ食材であっても、料理の仕方によって味に雲泥の差がでることは周知の通りである。料理の仕方によっては、食材のもつ特徴をまったくダメにしてしまって不味い料理になってしまう場合もあるし、逆に、食材の持つ特徴を最大限に引き出す美味しい料理になることもある。これは料理の腕しだいである。まさに、学術論文も同じことが言えるのである。


学術論文でいえば、食材は、収集されたデータである。データはある研究計画にしたがっていったん収集してしまうと、後戻りできないことが多い。よって、得られたデータから分析して、これはいけるというような発見があったという時点を所与として考えてみよう。


料理にとって食材が大切なのはいうまでもない。学術論文で言えば、データや発見がたいしたことがなかったら、一流の論文に仕上げることはできない。だから、食材=データ・発見は必要条件である。しかし、もっと大切なのは料理の腕だ。学術論文の作成において、食材たるデータや発見を最高にひきたてる一流のシェフであるかどうかが重要だ。


これは、絶え間ない訓練をつむことによってしか習得することはできないだろう。料理にしても、一流のレストランでじっさいに一流の料理を食べてきる、師匠を見つけて勉強する・・・など。学術論文も同じ、一流の研究論文を何本も読み込む。一流の研究者からの指導を受ける・・・など。そうすることによって、得られた食材をどう調理すれば最高の料理に仕上がるのかの腕とセンスが身につくのである。