宇宙論

私たちは宇宙によってつくられ、いずれは宇宙にもどっていくよりほかに道がありません。・・・宇宙からのがれられないということは、見方を変えれば、すべてが宇宙の一部分であり、それ故に、小さい個人でありながら、広大無辺な宇宙も、夢を見るということにおいて往き来できるようにつくられているのかもしれません。私たちの一生とは、宇宙からの旅人として、地球という星にちょっとの間ホームステイしているようなものです(佐治 2000:29)。

私たちは何からできているのでしょうか。その答は「宇宙の中に存在するものからできている」ということです。この事実は、私たちの宇宙がただひと粒の光から誕生したことを考えれば当然の答かもしれません。この宇宙の中に存在するものはすべて重なりあい、かかわりあって宇宙というただひとつの巨大な織物をつくっているかのようです。その織物の一本一本の糸が私たちであるかのようです。
私たちの体をつくっている原子のひと粒ひと粒はけっしてなくなることはありません。原子たちの組合せによって花となり、あるいは小鳥に姿をかえて、人となり、そして風や太陽にのみこまれる日には美しいオーロラとなって宇宙に飛びたっていくことでしょう。
・・・こうして宇宙の開始以来、私たちのからだをつくっている原子たちは、生まれることもなく、そして消えることもなく、宇宙をめぐりめぐっているということです。このように宇宙全体はつながっていて根源的に考えるとけっして分けることができません。私たちの人生はこの広大無辺な宇宙のからくりをになうひとつのプロセスとして、しかもしれはただ一度きりのかけがえのない持続としてのひとこまでしょう(佐治 2000:38-39)

コメント:本書でも紹介されているように、この物理学的宇宙観はおそろしいほど輪廻転生や色即是空などの仏教的思想と類似している。唯物論唯識論は表裏一体であるかのようだ。

文献

佐治晴夫「宇宙はささやく」PHP文庫