時を超え、美を生む「構図」とは何か

布施(2012)は、絵画でもっとも重要であり、絵画に欠かせないのが「構図」だという。例えば、ピカソは子供のように描いたが、子供はピカソのようには描けない。その決定的な違いが「構図」である。布施は、構図に美の秘密が隠されているという。ではいったい「構図」とは何だろうか。


布施は、点と線がつくる構図、形がつくる構図、空間、次元、色、光がつくる構図などを説明したうえで、構図にあるのは、たった1つのことだという。それは「構図は、宇宙を要約したもの」ということなのである。すなわち、構図の源泉は地球と宇宙である。


例えば、垂直の線は、重力を、水平な線は、地平線を、といったように、地球の水平線、重力、自転、公転、さらには太陽など、地球と宇宙にある世界を、その基本的なものを、絵画の画面に造形したものが「構図」だと布施はいうのである。私たちの周りには宇宙があり、その形やリズムがある。構図はそれを要約し、目に見える、耳に聞こえるものとする装置である。その時、芸術作品は、宇宙と響き合い、宇宙をかいま見せ、そして宇宙そのものとなる。


しかし世界には、もう1つの宇宙がある。外なる宇宙である地球や太陽に対する、内なる宇宙。それは「人体」だという。つまり、人体もまた、構図の源泉だと布施はいうのである。この人体の基本構造を作っているのは、骨格である。とりわけ「立つ」という基本姿勢は、地球と宇宙の本質でもある「重力」にも関係している。つまり、重力とのせめぎあいの果てに人体が手に入れたものが骨格である。


このように、私たちの外にある宇宙は、同時に、骨格の構造のように、人体の内部にも影響を及ぼしている。人体をつくり、その方向を決めたのは宇宙の仕組みでもあるというわけである。人体の構図は宇宙の縮図である。言い換えれば、人体は宇宙そのものであり、1つの「小さな宇宙」だと布施はいう。人体はつねに宇宙を感じ、また小さな宇宙としていつも宇宙と響き合っている。


体は、内と外に向かってアンテナを向け、どちらに対しても構図のセンスを使ってバランスを取っていると布施はいう。絵画というのは、そういう構図のセンスを形にしたものだという。人は、どのような構図に、喜びと幸せと心地よさと「絶対」のセンスを感じるのかという「構図のセンス」を絵画は探求してきたのであり、これは、絵の表面からは隠されて、すぐには見えない、絵画の「文法」だという。絵画はモノであるが、単なるモノではなく、構図があり、それが宇宙にまでつながっていく。であるから、布施は、絵画を見たらまず構図に目を凝らしてみることを勧める。そうすれば絵画が「見えて」くるはずだという。